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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年夏
761/823

グループデート 加藤紬視点。

 誘いは唐突だった。


「遊園地行こう! 小中高生が本格的な休みシーズンに突入する前に!」

 ひとつ下の友人、柳本菊花は最近、風峰仄にご執心だ。

「メンバーは?」

「ほのちゃんと千秋とたけると飛鳥ちゃんで、あと逸美んと千秋に告白したてのエシレちゃん」

 やっぱりそこが目的ね。このあいだも浴衣を一緒に観にきてたくらいだし。

「そう」

「一角が崩れると私と健の自棄デートになりそうだから、お願い!」

 必死に拝まれる。

「いいわよ」

「ほんと! ありがとう!」

 逸美とのことを心配してくれているのはわかってるし。

 というか、仄さん、参加してくれるの?



 心配をよそに参加してくれたよう。

「久しぶり」

「ホントね。千秋が商店街あたりに来たときは出かけてたから」

 うろな駅で千秋と挨拶を交わしつつお弁当について情報交換する。

「よかった。メインはそんなに作ってないの。後は千秋の相手がどれくらい用意するタイプかよね?」

 仄さん、飛鳥さん、エシレさん、普段組み込めないメンバーがいるとはいえ、飛鳥さんは千秋の配分に任せば大丈夫だろうし、仄さんはお弁当を作るなら携帯食で済ませるか、現地でコンビニ弁当なイメージがある。

 まぁ、当たらずも遠からずだったらしい。

「千秋のお相手は?」

「むこうの駅で合流」

 ちらちらと逸美の視線を感じる。もちろんスルー。

「ちーちゃん、おべんと期待していい?」

 飛鳥さんが目をキラキラ。

「から揚げとハンバーグと卵焼きは抑えてるよ。子供舌」

「肉食っていってよ!」

 飛鳥さんはもうっと千秋にじゃれる。

 で菊花が健君を茶化すものだからカップリングが妙だ。




 ちょっとしたハプニングが入場前にあったけれど、大きな問題なく遊園地。

「千秋さいなーん」

 菊花は気楽に見送ったけどあれってねぇ、

「妬きもちやきさんねぇ」

「だな」

 仄さんから同意がくる。

 ちょっとしたハプニング。

 エシレちゃんがジュースを千秋にぶっ掛けたのだ。もちろん事故を装って。

 しかもお茶とかじゃなくてべたつく炭酸飲料。オロオロしてたけど行為自体はワザとっぽい。

 確かに計画的か発作的犯行かは謎だけど。

「他のヤツの匂いがいやだったんだろ」

 健君も少し眉をひそめつつも千秋が置き去ることになったお弁当荷物を肩にかけてる。

「他のヤツの匂い?」

 菊花がわかってなくて首をかしげる。

 軽く面倒そうにした健君が舌打ち。

「千秋の服の大半は他の男に用意してもらったもんだからだろ」

「お古でもらったって言ってたよね?」

「サイズほぼジャストでか?」

 菊花も流石に気がついたようだった。明らかにソレはおかしい。千秋がその言葉を信じてるかどうかは別として、千秋用に用意された服なのは確かだと思える。

「裏の意図があるかどうかは別として、恋人になりたいんなら気に食わないだろ?」

 なんとなく納得の空気のあるそれでいて微妙に気まずい沈黙。

「悪い、待たせた」

 千秋が戻ってきて黙ってる私たちを不思議そうに見た。

「どのアトラクションからいくか決めたか?」

「最後は観覧車だよね!」

 菊花の声に千秋は呆れを隠さない。

「最初のじゃねーのかよ」

「あの、お待たせして、その、ごめんなさい。吉羽エシレです」

 その後は簡単な自己紹介タイム。


 和やかに園内に入れば、おでむかえのマスコットにエシレちゃんが怯えて千秋にしがみついたり。

「中に人が入ってるのよ」と菊花がお姉さんぶって説明すると、「ファッションですか?」と不思議そうに目を瞬かせていた。

 聞きつけたマスコットがパントマイムで菊花に苦情を申し立て、健君が「中に人などいない」とある種お約束の言葉を口にすればマスコットが大肯定。

 エシレちゃんの反応は「うわぁ、すごいです」だった。たぶん、本気。

「写真撮ろう!」

 そう声を上げたのは意外にも楽しむ気ばっちりだった飛鳥さん。

 エシレちゃんはマスコットのツーショットや千秋を交えてと撮ってもらって楽しそう。

 何気なくエシレちゃんを餌に飛鳥さんと同じフレームに入ってる健君はがんばってると思う。

「遊園地、はじめてなんだって」

「そう」

「逸美、人ごみ苦手だしさ……」

 千秋の言いたいことはわかった。

「理想は、カップルに別れての行動よね。でも、最初に急流コースターいきたいの。コレは全員で行かない?」







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