7/27 深夜 うろや旅館ビーチ別館。従業員用宿舎にて
ドアを開けて見慣れた状況に少し反応に困る。
「えっと、宇美さん。また?」
「はは。またメールで叱っておくわ」
「お疲れ様です」
「にゃー。ふちゃりとも隼子をなんだとおもってゅのよーぉ」
宇美さんと顔を見合わせる。
同時にため息。
「酔っ払い」
きれいにハモる。
そして二人でむなしい心境に駆られる。
「ひっどーい」
文句を付けながらきゃははと笑う隼子さん。完全に出来上がっている。
「ひどいのは隼子さん、明日……今日は水着コンの手伝いがあるって言っておいたのに」
酔っ払いを宇美さんから受け取ると隼子さんの部屋へと連れて行く。
「ごめんね。逸美君、大丈夫?」
「平気。……慣れてるし」
言ってて悲しい。
「えっと、がんばれ」
「ええ。未来の明るい引き篭もり生活のために」
「いや、引き篭もっちゃダメでしょ。今年は二学期もちゃんと学校行くんだよ?」
「……」
めんどくさいな。
「行くんだよ?」
耳たぶをつかまれて笑顔で引っ張られる。
しまった。
宇美さんも酔ってる。
「迎え酒いくぞーぉ」
隼子さんが部屋の冷蔵庫からビールを取り出すのが見えた。シャツが乱れて紺色にレース飾りのブラが見える。
あのまま脱ぎ捨てる気だろう。
「え。隼子?」
宇美さんがそちらに注意を移す。
「宇美もおいでー」
手招く隼子さん。
僕は宇美さんを部屋に押し込むと外から持っていた合鍵で鍵をかける。
「おやすみなさーい」
「こらー逸美くーん」
素直にドアを開けないところを見ると今日の宇美さんはかなり飲んだらしい。
隼子さんの飲んだ量を考えるのは……推して知るべし。か。
千秋にメールしよ。
うろや旅館の仲居を伊藤母が昔から勤めているツテで部屋を格安で借りてます。




