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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
754/823

ほのちゃん4

「ほのか!」

 うっちゃんが客待ち中帳簿処理中のほのちゃんに呼びかける。

 私に気がついて軽く手を振ってくる。

「誘われてるんだけど」

 誘われてる?

「桐子義姉さんに言ってから?」

「あー。まだ」

「言えよ。真っ先に」

 呆れたように言いながら財布から一枚のカード。

「ん。気をつける。上限は?」

 ほのちゃんが指を一本立てる。

「それ以上は兄さんに頼め」

「おー。下りたら返すー」

「……期待してない」

 既に帳簿に視線を戻しているほのちゃんはそっけない。

「そっか? 友達んとこに泊めてもらうのもまぁ、ちょっとあれかと思ってさぁ」

「女のトコに泊んのはやめとけ。新婚」

「だよなぁ」

 ほのちゃんとうっちゃんの会話は仲の良い兄弟だと思わせる。

 通じ合う感じ。ネタはともかく。

「助かる。さんきゅな!」

 それだけ言って、うっちゃんは店舗を出て行く。


「今のはなに?」

 尋ねれば、ほのちゃんが深く息を吐く。

「なんでもない。ウチの問題」

「ふぅん。ねぇ、ほのちゃん、紬ちゃんのトコちょっと付き合って!」

「はぁ?」

 なに言ってんのという表情が痛い。

 負けない。負けちゃダメよ。菊花!

「浴衣新しく買うんだけど、選ぶの手伝ってほしいの。すぐそこだし、お客さん来たらすぐ戻ればいいし」

 断られるかな?

 ほのちゃんは少し、考え込んでから「ん」って承諾してくれた。

 やったー!



 紬ちゃんが浴衣コーナーを整理しながら待っててくれた。

「いらっしゃいませ」

「浴衣買いに来たよー」

「夏祭り用ね」

「うん!」

 浴衣は先に候補を選んでほのちゃんに決めてもらう。

 選んでいる間になぜかほのちゃんは三種類選んでおばさんに声をかけて購入していた。

 はやっ!

 紺地に影みたいな蜻蛉。なんとなく地味な浴衣。

「小物が映えるし、素材勝負になる」

 そんな言葉にほだされた。

 暖色系の明るい華やかなものを見てたんだけど、ほのちゃんが言うならって決めちゃった。

「和装は美人度五割増しー」

「夏祭りに浴衣美人は増えるわよね」

「紬ちゃん!?」

「菊花ちゃんなら綺麗に着こなせるわ。大丈夫。髪はポニーテールじゃなくて、ちゃんとアップするのがいいかしら?」

「えっ。いや、すぐ崩れるし、ポニーテールしてぐりっと団子で良いと思う」

「先に店に戻るから」

「え?」

 むぅ!

 ほのちゃんに置いて行かれた!

 小物の選ぶのも手伝ってもらおうかと思ってたのに!

「紬ちゃん、似合うと思う?」

 いつものと違いすぎてちょっと不安。

「あら。自信を持ってね。きっと、菊花ちゃんに似合うから」

 にっこり笑う紬ちゃんに着付けを教えてと頼んでたから、そのまま紬ちゃんの部屋へあげてもらった。


 着付けてもらった浴衣は何処か大人ぽくてあまり落ち着きのないわたしにあっているのか自信がない。

 あんまりにも不安そうだったのか、紬ちゃんが笑う。

「やだ。菊花ちゃん、着物はただの着る物よ? 装いに応じた心構えは大事だけど、着物に着られちゃダメだわ。菊花ちゃんは菊花ちゃんだもの。菊花ちゃんの髪はクセが強めだからコームでアップするのが向いてると思うのよ?」

 タンクトップとか、ジーンズとかなら着られてる気はせずに着てる感じだけど、正装系や和装系は着られてる気になるかなぁ。



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