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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
753/823

うちの子カワイイ

 クルクルと回るのはボールペン。

 テーブルの上に置かれた書類を埋めていく。

 夏が近づくと予約が増えてくるのは海水浴場近くの宿としての宿命か。

 メインで書類処理をしているのは跡継ぎの逸美。義弟。

 逸美は対人が苦手で大学受験に失敗。

 人と会わないという気安さで選んだ通信教育で今は資格取得にはしっている。俺もたまにリストを見て便乗する。今回はボールペン字。その前はポップ制作。

 ま、お義父さんは逸美の高校卒業だけでもうまくいけたのが奇跡だと喜んでるらしい。小中学校は義務だからなぁ。

 家族になって一年以上経つが、いまだに目を合わせた会話は成立していない。

 難しいお年頃だ。


「ぅあー」

 だしだしと勢いよく叩かれる。

「おー。朝ごはんにしよーなぁ」

 筆記具とメモ紙をテーブルの奥に追いやって忙しなく催促する愛娘七夜をベビーチェアに拘束し、グッチャグチャのベビーフードを与える。

 七夜の最近のお気に入りは『や♡』である。

 すんげくかわいいけどスプーンやごはんをポイするから気が抜けない。

 しかも好物でも『や♡』って放り投げて、無くなったと泣くからまた大変。 かわいくて仕方がないがイラっともする。

 だから周りには気をつけておく。

 逸美の書類に汚れがとんでもかわいそうだしな。

 琉伊によく遊んでもらってるせいか、妙な口グセが出来つつある。

 おとーさんを見上げて『めっさちゅ』はダメ!

 おじーちゃんの頭に手を伸ばして『せんめちゅ』もおじーちゃん泣いちゃうからダメだ!

 熱い時には『にゃ』って言っちゃう口グセはかわいいからいいけどね。

「にゃぶぅ」

 だんだんとベビーチェアがぶっ叩かれる。散らばったヨーグルトにまぁ、満足そうな笑顔。

「七夜ちゃん、めっ!」

「め? めっさちゅ!」

 ちげーでしょ。七夜ちゃん。でもカワイイから頬ずりしちゃうぞー!

 逸美が意気揚々とスプーンを振り回すちびっ子にドン引きして従業員食堂から事務所に逃げ込んでしまった。

 ひっきーの扱いって難しい。

 新しいヨーグルトを食べさせながら食い終われば風呂だなと思う。

 なんだかんだと健君がかまってはくれているけど、千秋ちゃんがいないとまじ引きこもり度合いが問題だ。

「紬ちゃんストーキングが問題よねー」

 隼子ちゃんがタンクトップ短パンというスタイルで椅子に座る。その際置いたトレーにはコーヒーと漬け物。

 いいけどな。

 それに紬嬢と逸美は距離を計っているだけだから訴えられないし、本当にストーキングする気合いを見せれば紬嬢は喜ぶんじゃないかなぁ?

「二日酔いか?」

「んー。昨日は久しぶりに一人呑みじゃなくてさー、猪口センセに奢ってもらっちゃったぁ」

 ラッキーと笑うけど、正体なくすまでのむなよ。と思う。

「隼人は?」

「学校」

 もう、九時だからな。

「せんちぇー」

 きゃあきゃあと七夜がスプーンを放り投げる。

「七夜、めっ!」

 きょとんと目を見開いて、キョロキョロ。

「やぁーーーん」

 グズる七夜をなだめるのは大変だった。

 ホントお母さんそっくりだな!

「きっと将来モテてたいへんだぞ!」

「え!?」

 うちの子カワイイ。

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