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7/27  準備中1

 うろな工務店の前田のおっちゃん指揮の下、ARIKAから程近い場所に仮設ステージが作られていく。

 その様子を眺めながらカラスマントと黒の長袖長ズボン状態の宗一郎君が喋っている。

 心の平和のために話は聞かない。

 宗一郎君もどうやら黒尽くめで行くらしい。

「もりあがってるね」

 サックスのウィンドブレーカーにつばの広い麦藁帽子。

「あはは。あそこの会話は聞きたくないよー。彼の弟妹たちに言わせると見放される寸前に微妙回復を繰り返してるらしいよ鎮」

「ふぅん。見捨てられそうな瞬間がわかるのかな?」

 肩をすくめる。

「本能じゃないかな? 雑用担当だって? 旅館の跡継ぎも大変だな」

「基本は姉貴が継ぐから。こっちは掃除とか、帳簿とか、設備の応急処置が出来るように特殊免許の取得かなー」

「大変じゃん」

「引き篭もり生活のためだし」

「時々は出てきて欲しいね」

「そういえば、」


「ん?」


「料理部の方に顔、出してるか?」

 うろや旅館ビーチ別館に住んでいる跡継ぎ息子、木野江きのえ逸美いつみ

 ひとつ年上だが学年は同じ。

「え? ううん。特訓が終わったら海の家に集中してって言われて。ジュースの方も目処がつきそうだって言ってたなー」

 早川君も岡本さんも一応は調理できるようになったし。

 岡本さんなんかは「これで自宅でもまともな料理が食べれる」と、あやしい発言してたけど。家庭事情はいろいろだよね。

「ふぅん。まぁ、がんばって」

「なにを?!」


「あ」

「あ。じゃなくて、何があるんだよ」

 視線の先を追うと隆維と涼維がいた。

 今日はうちから出てこないかと思ってた。

「相変わらず、仲がいいね」

 手をつないで歩く双子はそう見える。

「まぁ、2~3日で普段どおりかな」

「いつもの? ここ数年なかったんじゃないのか?」

「心配ありがとう。そうなんだよねー。一生モノのつもりであれは付き合っていくしかないだろうしね」

 横からため息が聞こえる。

「一生か。千秋は原因知ってるの?」

「んー。当時は一緒に暮らしてないからね。知らないんだ。初めて知り合ったときからだから、あれはあんなもの」


「ふぅん。あ。カラスマント頭下げてる」

 そちらを見ると、動きの指導を受けてるカラスマント。

 予備のマントを捌いて見本を見せる宗一郎君。

 手を叩いて頷くカラスマント。

 自分なりのアレンジも加えつつ、マント捌きが上達していくカラスマント。

「思いっきりため息つかれてる」

 苦笑がもれる。

 見捨てられてはいないらしく、時々何か言われて、動きを変える。そんな練習が繰り返されていた。


「隼子さんがさ」

 ん?

 あの人ちょっと苦手なんだけど?

「最近鎮が図書館来ないって言ってた」

 顔を見合わせて笑う。


 宗一郎君が前田のおっさんに話しかけて、おっちゃんが頷く。

 まずは宗一郎君が舞台を歩き回る。

 降りたり登ったり、ぐるぐる。

 途中でカラスマントと交代。

 下からどう見えるかを確認してるようだった。

「まじめだなー」

「カラスマントはとってる行動の意図わかってんのかなー」



 兄弟としていえば、わかってないと思います。



うろな工務店前田さんお借りしております。

ステージはARIKAに近い場所です

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