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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
746/823

勉強会の最中です。長船祥晴

 試験勉強兼受験勉強を隆維達とする。

 今、視線は隆維の残していったスマホに注がれている。

 番号非通知。

 着信中。

 美丘さん山辺さんは知らんぷり。

 碧ちゃんはどうしようか気にしてる。

 隆維はドリンク取りに行ってるし。

「えい!」

 覚悟を決めて応答だ。パスは知ってるし~。(あとで変えとけっていっとこ繋がったよ)

『あ、繋がった……』

「千秋さんだぁ」

『え? ヨッシー? なんで?』

「勉強会中。持ち主はドリンク取りにいってるー。怪我したってまた聞きしたんだけど、へーき?」

『ぁー。一応へーき。急流滑りに付き合わされた打ち身も、カエルのタマゴとカビの浮いた水塗れのガラスで切った傷があったり、太古の先住民に驚いてパニクった奴に下敷きにされて痣もできたりだけど、回復中〜。見苦しいけどな!』

 わー。

 機嫌悪い。つーか、平気なのか?

 小さく掃除くらいしやがれと吐き捨てる声が聞こえる。

『ところでウチの爬虫類は?』

「シアちゃん?」

『いや、りゅーっていうヤツ。今、いないんならいいんだ。夏休みは帰るから、それからで』

 切られそうな雰囲気に慌てる。

「待って! ここで切られたら絶対に隆維が俺たちに煩いから!」

『そう?』

「うん!」

 ちょーメーワクだから!

「ドリンク取ってきた〜。って会話中?」

 おっしゃー!

「隆維、千秋さん!」

「おー。千秋兄元気〜」

 スピーカーモードなので普通に喋る隆維。

 気持ち沈黙。

 ちょっ!? 千秋さん!?

『隆維』

「ん〜?」

『アレは何に対してで、どーゆー意味かなぁ?』

「アレ? あ! ジェイドにーちゃん手紙渡してくれたんだ?」

『そう。うん……。アレ、な』

 なんだ? 歯切れがやけに悪い。

 隆維何書いたんだ。その手紙に。

 嬉しそうに笑ってる隆維。

 千秋さん、声のトーンからして怒ってないか?

 ちらっと他のメンバーを見れば、首を横に振られる。

 誰も内容は知らないらしい。

「もちろん、書いた通り!」

『文字数十か』

「うん! 絶対通話かけてくれるって思ってさ」

 ドリンクを配り置きながら自分も席に座ってスマホを引き寄せる。

『……ぇ……。ハメられた?』

 ショックを受けてるのがわかる千秋さんの声。

「あの日はさ~、涼維との時間の日だからさ~。ジャマした千秋兄も悪いんだけどさー。即切りごめんなさい」

 沈黙。

 うん。即切りした隆維が悪い。

「それと、着拒否ごめんなさい。でも千秋兄も着拒したよね!」

『……あ、解除、……今ちょっと行方不明だから、また通話かけるよ。今使ってる、アドレス違うから』

 ん?

 千秋さんのスマホ(電源入らない)は今隆維が持ってんじゃあ?

 隆維も首を傾げてる。

「千秋兄……」

『ん? ああ、悪い。あの日から見かけてなくてさ、使わねーからつい忘れてた』

 トラブル続きでそれどころじゃなかった、ってとこかぁ。

「ひっでー。こっちに連絡することねーってか?」

 隆維がゴネる。

 むこうで千秋さんが笑ってる。

『鎮はアドは知ってるし。飛鳥ちゃんも健も逸美も知ってるよ。伯父さんには伝えてないけど、緊急事態とかってきっと半自動で連絡いきそうだから大丈夫だろ。こっちからの連絡は受け取り拒否でもさ』

「鎮兄、知ってんだ」

『共通の友人がいたりするからなー。アイツそっちに話回しやがった。ほら。勉強会の最中だろ? そうだな、二時間くらいおいて通話入れるから。後でな』

 通話が切れる。

 しばし、沈黙。

「うっわー! 信じらんねぇ。千秋兄、スマホ管理甘過ぎー!」

「お前もだ!」

 つい突っ込んだ。とりあえずパスワード変えろ。

「ねぇ、十文字なら、一筆箋で良かったんじゃないの?」

 山辺さんがストローを口もとに運びながら告げる。

 隆維は得意げに手を振ってにんまり笑う。

「謝罪の手紙だからな! ちゃんとふざけてない真面目な白封筒に白い便箋二枚を三つ折りにして心をこめて預けたぜ!」

 それを開けてみたら文字数十文字。すぐそばにいるわけでもない。ちょっとカチンとくるかも……つーか、怒るな。俺だったら。



「見えない四文字もちゃんと読んでくれるんだから千秋兄らしいよなー」

 隆維、どこまで喧嘩売ってるんだ?



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