ほのちゃん2
ほのちゃんは父さんが帰ってきてからもしばらく手伝いを続けてくれることになった。
うっちゃんも器用だったけど、ほのちゃんも器用でさくさく作業を覚えていく。
でも、父さんが「このまま就職すっか?」と聞いたら、首を横に振るのだ。
確かに安月給にしかならないなと笑う父さんは半分趣味だ。
「夏の間は手伝うから、オッさんは身体きっちり治せ」
それと他にもバイト探せ。とごくあたり前に告げる。
ほのちゃんは言葉数は少ないし、つっけんどん。
高校が中退になっても本当は気にしていなさげ。
笑うことがないのかと思えば、甥っ子だという亨君をからかう時は笑ってる。
好きだと告げたら応えてくれるんだろうか?
ウチで働けばいいのにって言いたくなる。
上のお兄さんは立派な職業で収入に余裕があるのかもしれないからっていつまでも縋ってられないでしょうって、言いたくなる。
「好き」って告げたら、「不安だったからすりかえただけだ。すぐ忘れられる」と返された。
「忘れない」
「それがただの依存と感謝にすぎないと気がつくべきだ」
眼差しは冷たい。
そして喋り過ぎたとばかりに黙って飴玉をくれる。
そこまで子供じゃないっ!
でも怒ったら子供みたいな気がしてもやもやするんだ。
あー。間怠っこしい!
鬱陶しい!
恋愛ヘタレは周囲に溢れてるから混ざるなんてごめんだわ!
叫んだら注目された。
気にしないし。
ふーんだ。
なまあったかい視線なんか嫌いだ……。
「菊花ちゃん、菊花ちゃん。恋愛ヘタレが傷つくからあんまり大っきい声で言わないの〜」
愛子がにこりとたしなめてくる。
麻衣子曰く、レッサーパンダ。高校時代と変わらない三つ編みおさげ。シンプル白シャツに水色と白の爽やかチェックスカートは踝まで。清楚系?
大学でリア充してるんだろうか?
「誰かを好きになるって素敵よね」
柔らかく微笑む。
「……見てて楽しいから?」
ずっと思ってた言葉を挟むとにっこりと肯定の笑顔。マジか!?
そうくるの?
「紬ちゃんも日生君達も麻衣子ちゃんも楽しいわ」
うふふと笑う。
「もちろん、直澄さんや宇美さん重さんも楽しいわ」
両手を重ねてにっこり。
かわいいポーズに騙されないから!
このレッサーパンダ!
「カラ回りしそうな英くんもドキドキしちゃうわ!」
してやるな。かわいそうだから!
見守っているだけよと笑う。
「こだわれば引きずっちゃうわよ?」
わかってる。
自分がどうしたいかわかっていないのがまた、始末が悪い。
「気にし過ぎてると、試験落としちゃうわよー」
それは嫌。
「よし!」
決めた!
「一夏は好きだって感情に従ってみる!」
うまくいってもいかなくても。そこでまた考える!
ふふふと愛子が楽しそうに笑う。
「がんば」
レッサーパンダの観察対象になってしまった感じだけど。
「おう!」
やってみよう!
覚悟してろ。
ほのちゃん!
『うろな担当見習いの覚え書き』
http://book1.adouzi.eu.org/n0755bz/
『うろな2代目業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n0460cb/
より高原直澄くん話題にお借りしました。




