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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
744/823

ほのちゃん

 買い物は出来合いメイン。

 ちょっと前に父さんが仕事中に腰を痛めて入院したせいで母さんは病院時間が長い。

 学校が終われば飛んで帰って来て店番だ。

 そうすれば母さんが病院に行きやすい。

「ただいまー」

 ジロリと視線が向けられる。

「お店番ありがとうほのちゃん」

 無言でメモパッドが差し出される。

 空気入れの客二人。

 パンク修理一件。

 冷やかし二件。

 客逃したかな?

「代金はアレでいいんだろう?」

 修理代表を指す。

「うん。ありがとう。大丈夫だった?」

 つまらなさそうに視線がはずされる。

 その際、ちらっと視線が買い物荷物に送られた。

「お惣菜だけど、生きていける!」

「大概、ものぐさだけどな」

 そう言ってため息。

「着替えてくれば?」

 そう言って買い物荷物を取り上げてキッチンへいってしまう。

 店の音はキッチンでも一応聞こえる。

「うん! よろしくー」

 靴を投げ脱いで階段を駆け上がる。

 風峰仄。

 新聞配達とかをやっていたフリーアルバイターのうっちゃん(今はうろ高定時の用務員さん)の弟だ。

 面差しは似ているのだけど、うっちゃんほどとっつきやすくはない。

 どちらかというと近づき難い。

 でも、優しいところがあるんだ。

 だから、お店番もしてくれる。最初は強制だったけど。

 階下から炒めモノの音。

 買ってきたお惣菜や食材をアレンジしてくれる。

「おお!」

 お料理男子カッコいいと言えば、ため息をつかれる。老けるぞ?

「生存の為の人間力だろう?」

「出来る人を見つけるのも生存力だよね!」

 適材適所ってヤツだ。親指立ててアピールするぞ。

「ごはんは炊いてあるから。おばさんが帰って来たら準備してやれよ。見舞いは行かなくていいのか?」

 スルーされた。

「昨日行ったし」


 父さんが出先で腰を痛めた日はバタバタでたまたま通りすがったほのちゃんが連絡を受けて対処に困っていた母さんを助けてくれた。

 周りの店の人達がメインだったらしいけど、店番に残ってくれたのはほのちゃんだった。(気がついたら取り残されていたとか言ってたけど)

 帰った私を病院に送り出してくれて、物凄く簡易の夕食準備をしてくれていた。

 ほのちゃんは定時制で勉強中だから、送り出して、それから閉店準備。

 途中で泣きそうになった。心細くて。普段平気な重さがひどく重く感じた。初日だから心配した母さんは父さんに付きっきり。入院グッズはほぼほのちゃんがセットして私に持たせて行かせたから往復もいらなかった。

 その前まで平気な顔してみんなに「たいしたことないんだって! この機会とばかりにいちゃついてんだからぁ」って言ってたのに。

 ほのちゃんが授業サボって閉店準備を手伝いにきてくれた。(サボりグセがあるのをこの時は知らなかった)

 うっちゃんの弟じゃなくてほのちゃんを見たんだと思う。

 片付け終わった後に女々しく泣けちゃったのは私らしくない。

 女は度胸と勢いだと思う。

 外見がいい男も内面がいい男も、スキル高い男もヘタレも見てきた。

 友人止まりだけどさ。

 好きだけど、独占したいわけじゃない。

 ほのちゃんを独占したいかって言えば違うと思う。ただ、気になる。それだけ。

「今度、サイクリング行こうよ。今回のお礼」

 楽しい提案をすると思いっきり嫌な顔をされた。

「行きたいだけだろう?」

 つい笑う。

 ほのちゃんにとって私はお子様の範疇。

「ばれた?」

 シブいイヤそうな以外の表情もほのちゃんは持ってる。

 甥っ子の亨君へ向けている表情は甘いから。

 それを羨むのはおかしいんだと思う。

 わかってるんだけどな。

「学校は大丈夫なのか?」

 ん?

「それはコッチのセリフ! ちゃんと行ってるの!?」

「九年プロジェクトで行ってる」

「……真面目にさっさと終わらせろ!」

 素で言ったほのちゃんに怒鳴った私は悪くない。

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