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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
743/823

スイーツと仮想親馬鹿。 風峰仄

「あら、仄君。いらっしゃい、ケーキがあるわよ?」

 義姉さんの言葉に「いただきます」とテーブルにつく。

 ふるべき話題は『例の日のごっこ遊び』

 亨は夜の勉強時間らしく教科書や参考書を広げ、テーブルについていた。

 自室で勉強するよりリビングの方が落ち着くらしい。姪っ子と呼ぶとぷぅと膨れて甥っ子だからといつものように言い返してくる。

「まぁ!」

 桐子義姉さんは嬉しそうに瞳を輝かせる。

「ニイサンじゃ、埒が明かなくてさ」

「上手に伝えられたらいいんだけど」

 照れくさそうに笑う姿に頷きながらケーキにフォークを差し入れる。

 レモンタルトはさっぱりめで食べやすい。




 鎮君のおっきめシャツをワンピースみたいに着てる空ちゃん。何かに拗ねて甘えてる鎮君のかわいかったこと!

 そのまま抱き合うようにキスって、カメラを持ってないことをあれほど後悔した夜はないと思うのよ。それに亨君が振り返って真っ赤になって慌てている姿は抱きしめたい感じでね、本当にぜひ撮影したかったわ。

 私の仮想息子たちすごくかわいい。

 最初は男の子たちでキッチンで部活の話しをしてたみたいで。だから私は仮想未来の嫁と、嫁と姑ごっこをしていたのよ。

 ああ、素敵な時間だったわ!

 やっぱり鎮君のどこがかわいいか、かっこいいのかは抑えておかないとダメだと思うの。

 もちろん、ダメなところもね。

 鎮君のばあい、いいところはストレートな愛情表現。でも、問題もストレートな愛情表現なのよねぇ。空ちゃんもわかってるみたいで頬を染めて『鎮君、だから……』とか言うものだからついぎゅーっと酔っ払いめかして空ちゃんを抱きしめちゃったぁ♪

 もー、かわいいしかでなかったのよ!

 ほんと、空ちゃんみたいにかわいいコが鎮君のそばにいるなら安心だわぁ。





「わかる仄君!?」





 うっとりと興奮するままの桐子義姉さんに手をとられる。

 あんまり接触は好きじゃない。

 思い出して興奮してるのか、桐子義姉さんの手はしっとりと暖かい。楽しかったんだなぁ。




 途中で恥ずかしくなったらしい鎮君が空ちゃんを抱きしめて「あぁあああ。そこまで!」とか言って話題切っちゃうのよー。

 空ちゃんが慌てて黙っちゃうんだけどね。抱き締められているその表情が幸せって感じで笑っちゃった。



 アレは鎮おにいさんがヤキモチ妬いただけだよ。桐子叔母さんが空おねえさんをぎゅうぎゅう抱きしめてはなさないから。



 亨がくすくす笑って告げる。楽しかったかと聞けば嬉しそうにハイとかえってくる。

 でも今度メイド服着せるから。




 鎮君は欲しいものを我慢しちゃうところがあるから。

 でもあの発言はかわいかったわぁ。



「あの発言?」

 聞けばにんまりと笑う桐子義姉さん。



「空は俺のなのー。ハグするのは俺なのー」って。

 空ちゃんの椅子の後ろに回って空ちゃんを抱きしめてね。その時点ではまだ空ちゃんを放す気はなかったから密着密着ね。今思えば亨君も巻き込んだら楽しかったかしら?

「あらぁ。独占欲強すぎちゃうと嫌われちゃうわよー」って少し意地悪言ったらね、

「空は俺のっ、だよね。それとも、いや?」

 強気に言ってから不安になったのか囁くように耳元で問うの。問われた空ちゃんは、頬を赤らめながら小声で「イヤじゃないよ」って応えて!

 それを受けて鎮君が嬉しそうに笑うその笑顔がかわいくて!

 それから視線を私にあわせて、

「おかあさん、空、かえして」

 というモノだから。

 真っ白よ!

 かわいいわ!

 かわいいしか出ない自分の知能低下を受け入れられるくらい素敵時間だったわ!



 大振りに手が振り回される。チョコレートコーティングのパリッと感がおいしい。

 桐子義姉さん、少し落ち着いて、続きを。




 空ちゃんに独占欲持ってるのはいいと思うけど、一番良かったと思うのは、空ちゃんがそれを嫌だって思ってないことかしら?

 仄君はきつい独占欲ってどう思う?



 そんなの決まってる。

「煩わしいね」

 だから特別なんていらない。

 両親は愛し合っていた。いや、愛し合っている。ただ、母には二人一番がいただけ。

 狂った独占欲。自由人な母。

 愛情は人を狂わせる。

 上の兄は父親の違う潤を愛してる。それは妻子にむける愛情とは異なる愛情。亨の前ではどこまでも良い父。外面だってキッチリ。

 学歴挫けた居候にだって月々の生活費は出してくれてる。(自分で稼いでるから貯金と姪っ子の衣装費だけど)

 潤に対してだって家族愛の名の下に社会不適合素養の強さを擁護する。本当は手放したくないと考えてるんだろう。

 だから、愛情は人を狂わせて壊してしまうモノだと思う。

 ただ、この思考は偏ってるし、亨が影響を受けるべきじゃないから言わない。



 きっと、仄君にも特別な人ができれるわ。



 桐子義姉さんが微笑むからそうだね。と応えておく。

 そんなものいらない。





 あのね。鎮君は『おかあさん』って呼ぶときすごく切ないの。

 届かないモノを欲しがってるみたいに。

 私もね。『おかあさん』って呼ばれることは諦めていたから。本当にうちの子ならイイのにと思うのよ。

 だから、待ってたの。

 空ちゃんのことを『大切な彼女』って紹介してくれるかしらって。

 付き合ってるのは知っていても紹介されるまでって特別だわ。

 だから、仄君も好きな人、お付き合いする人ができたら紹介してね。もちろん、亨君もよ?



 季節のフルーツロールケーキを口に運びながら、好きな人ができたらねと笑っておく。

 亨も少し考えてから頷いていた。



 十年前に潤が桐子義姉さんとうまくいってたなら何か変わってたかなぁ。



『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

空ちゃんお借りいたしました。

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