表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
740/823

少し、複雑な気分。天音から隆維

 流れて戸津先生のところでお手紙書き。

 白い便箋を見ながら隆維はジッとしている。その手には試供品のボールペン。支払い金額は補填されたけどね。試供品(それ)は私のでいいと思ってる。

 宇美さんがおやつを提供してくれる。ジェイドさんとは顔見知りっぽい。

 途中、ジェイドさんが電話していた。

「りゅー」

 呼びかけられてジロッと睨む。かなり機嫌悪い。

「部屋がちょっと散らかってて、散らかし犯追求もせず、『もういい』って一人お片づけスタートって、ハイディだとかなりヤバイんだけど、千秋は?」

「ハイディ? 父さんのコトだよね? 千秋兄は目についた軽い散らかりは普通に片付けるけど? 後で嫌味くらいくるけど」

 ここの兄弟は普通に潔癖かと突っ込みたくなるとこがあるし、千秋さんの部屋が一番、散らかってる方だという話だし。

「そっか〜。大丈夫なんだ」

 でも、日生のおじさん怒るの?

 私とジェイドさんの視線が合う。

「怒る怒る。結構短気だからね。口煩いし。すぐ、手が出るし。脅してくるしさ」

 すっごい大好きオーラで悪口を言い連ねる。

『ぶなん』

 デブ猫が隆維の膝に割り込む。隆維はむぞうさにそのおなかを撫でてやっている。

「ちゃんと生物の安全確保はしたしね」

「せーぶつ?」

「カエルの水槽が割れてさー、部屋水浸しにガラスまみれ」

 いやぁ、カエル部屋から出すの大変だったと。

 あれ?

「それ、ちょっとじゃねーよ。罵詈雑言ナシでやってたらヤバイと思う。まぁ、それ以前に内側にいれて無ければ、有りの対応だけどさ」

 たたんだ手紙を封筒にいれて封をする。

「はい。ちゃんと渡してくれるんだろうな?」

「もちろん!」

「……千秋兄の写真とかもあったりすんの?」

「あるよ? 見る?」

 得意げにひろげた写真は確かに千秋さんが写ってた。

 掃除用具を持って指揮してるのとか、食器を洗いながらつまみ食いしてる人を踏んでたり、結構楽しそうだ。

「コレはばれたら怒られそうなやつ〜」

 ぬいぐるみに囲まれて安眠モードの千秋さんだった。寝てる間に周りに積んだのか。

「千秋兄もふったの好きだから。バレる前に謝れば良かったのに」

「場所は封印してたんだけどなぁ」

「いや、掃除しろよ」

 会話が微妙どころじゃなくずれている。封印しても綺麗にならないから。

「封印したからいっかと思ってたんだけど、ジークが言うには片付け中に千秋がりゅーけつざたとか言って、電話が切れたんー」

 あ。

 ガンッとジェイドさんの頭が沈んだ。

 日生のおじさんだった。うしろで宇美さんが手を振ってる。

「何万回掃除を覚えろと言えば覚えるのかな。こののーみそと体はっ」

「……えっと、とりあえず、ムリョータイスーで」

 覚える気はなさそうだった。


 日生のおウチに連れ帰られて反省を促されるらしいんだけど、ずっと隆維は不機嫌だった。ボールペンは「さんきゅ」つきで返してもらった。



 ◇◇



 馴れ馴れしいジェイドにーちゃんは誰か他の人も共犯なのにと不満そう。

 少しくらい荒れてた方がやりがいあっていいだろうとか、その系統の発言が続く。

 そして父さんにゲンコツされる。

 もしかしたら、父さんを連れて行きたいのかなとか思うんだ。

 父さんが俺たちのところに帰って来るまでの時間って、実際、三年くらいだったかな? 小さかったからよくは覚えてないんだ。帰ってきてからも一緒に住むようになるまで間があったし。

 その間どこで何をしてたかは情報はないってラフは言ってた。

 ミラはその時にできたという(いもーと)で。

 つまり、そこには人間関係は存在する。それも芹香の家の方からはツテがあったらしいし。そういう意味、我が父ながら胡散臭い。

 そう嫌味っぽく言ってみれば笑って「胡散臭いな」と認めるから、会話は続かない。

 目の前のじゃれあいみたいな関係は築けない。

 なんだか『家族』を見せ付けられてる気分になる。

 ミアやノアみたいに全幅の信頼なんかできない。ミラみたいに一番大好きなんて向けれない。

 にーさんたちも父さんにはどこか遠慮というか、壁があって、だからそんなものだと思えてた。

 父さんは、男の子にはそんな対応する人だって思ってた。

 違った。

 どーってことのないことだと思う。

 怒られるようなコトを俺たちがしてないだけ?

 俺たちに一年かけて触れる時間より多い時期、今だけでジェイドにーちゃんに触ってる。いや、別にごんごんお手軽に殴られたいわけじゃないんだ。痛いのは泣けるから嫌いだし、わけわかんなくなるし。

 ……そっか。

 少し、嫉妬してるんだ。

 涼維に会いたい。

 千秋兄にいつもみたいに『ばっかじゃねーの』って飛ばして欲しい。

 ジェイドにーちゃんは別に俺を排除したいんじゃない。向けられる視線は懐っこいし。


「うりゃっ」


 え?

 ふわんと足が浮いた。

「っな!?」

 頬に頬がすり寄せられる。

「アツイよ。抱っこしたげる」

 ジェイドにーちゃんの肌はヒヤリとしていた。

「お姫様抱っこが楽?」

 なにいってんの?

「歩ける! おろして!」

「無理しなーい。無理しなーい」

 けらけらと楽しそうに笑う。

 俺は、楽しくなーい!

 交渉の末、おんぶに妥協してもらった。

 恥ずかしいし!


 起きたら家だったし。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ