思わぬ来客
「おなか、すいてたのねぇ」
母さんがにこにこと見知らぬ男に食事を食べさせている。
話を聞けば、店の前でおなかを鳴かせてうずくまっていたのだとか。
「オイしーです! ちょっぴりの機内食いらいのフードです!」
母さんはあらあらとおかわりを用意しながら笑っている。父さん単身赴任でいないんだから、むやみに人を入れるのはどうかと思う。
「どこか、行くところだったのかしら?」
母さんに任せておいたら埒が明かないわ。
「ん、えっと、はいでぃ、じゃなかった、ヒナリアキサトに会いに」
「あら、暁君なの。宇美ちゃん、電話してあげて。そーいえば、お名前は?」
男は卵焼きを飲み込んで幸せそうににっこり。
「ジェイドっていうのー」
思ったより早く暁智さん到着。
「ご迷惑を!」
到着してショップのチビちゃんたちのお世話をするジェイドさんを確認、母さんに頭を下げる。
「うふふーお手伝いしてもらえて助かっちゃってるから気にしないでー」
もう少ししたら臨時バイト君が来る時間。念のためにバイトを増やして母さんが急に動けない時用の対応準備中だ。あと、暫くは重が手伝いに入る。父さんに連絡入れたいんだけど、笑ってダメっていわれる。帰ってきたらわかるでしょって。子供じゃないのに。
「梨沙! ごはんオイシかった!」
そう言って母さんの腹部に手を当てて優しく撫でるジェイドさん。
「おかあさんのごはんオイシイからね」
その様子を見ながらため息の暁智さん。
「おはよー。チケット代と観光資金ちょーだい?」
ジェイドさんは暁智さんに明るくねだって、迷いのない勢いで殴られてた。
「おはよう。まず、いきなりの来訪理由と資金提供が必要な理由を述べるところからかな?」
「暁くーん、いじめちゃダメよー」
「ありがとー。梨沙ー。ただのコミュニケーションだからダイジョブー」
愛の鞭とはしゃいでる。
「ミアノアリョーの写真コレクション!」
一瞬トランプのように広げられたソレはサッと暁智さんの手の中に。
「もーちょっと、リューとリョーとは距離詰めた方がいーんじゃないかってミラが気にしてたからねー。お小遣いー」
ぴらぴらと手が揺れる。「一泊したいなぁー」とか言いながら。
「あら。お部屋あるわよー?」
母さん!?
「いえ、それならウチに泊めますし」
「ミラに蹴られるからホテルがいー」
もう一回叩かれてた。
仲がいーわねぇと母さんが笑っている。
「本当に、自由人で」
母さんの言葉にVサインしてみせている。元気だ。
困ったように笑ってる暁智さんの対応は気にしてないみたい。
「私もお写真見たいわぁ暁くん、開店準備手伝ってお茶飲んでいってね」
「ミアのレッスンふーけーの写真やピクニック写真もあるよー」
「あら。楽しみねぇ」
楽しそうな会話。
「暁智さん、お店の方は?」
「人はいるから大丈夫かな」
少し、困ったような微苦笑がもれた。




