ごっこ遊び2
空ちゃんに着替えをと思って、自分の着替えを眺める。問題は胸のサイズね。
フリーサイズのワンピースにXLのサマーセーター。ああ。うちに泊まっていた間に揃えた鎮君のシャツがまだ残ってたわよね。
彼シャツっていいわよね。
未成年のデート時間としては、微妙な時間だと思うけれど、鎮君のそのあたりの基準はゆるい。大学生だしねと思いもする。
「空ちゃん着替えを持ってきたわ。お家、時間大丈夫?」
返ってくるのは恥ずかしそうな可愛らしい声。隙間から渡して扉越し。
「ごめんなさいね。びっくりさせちゃったわね。すごく楽しそうな状況だったものだから」
一番驚いていたのは鎮君かもしれないけど。
「だって、鎮君が体験することはない気がしたの」
家族のそういうシーン。
ということはね。
「空ちゃんも、体験しそびれるのかもって思って、疑似体験してもらっちゃった。驚いてくれたら嬉しいんだけど、困らせすぎはダメよね〜」
そっと開いたドアワンピースに鎮君のシャツな空ちゃん。
あら。かわいい。
「かわいい娘までできた気分だわ〜」
青空のお嬢さん達はみんなかわいらしいものね。
丁度、上から降りてきた鎮君達に「ね」と見せびらかしてみる。
「うん。空、かわいい」
鎮君はどこまでもナチュラルに賞賛をおくる。
「彼シャツって萌えますよね」
亨君が静かに一言添える。
言わなさそうに見えて、潤の影響を受けているらしい亨君はそういうことも言う。ただ、普段は控えているらしい。
『言うシーンってそんなにないじゃないですか』って潤には言ってたかしら。
空ちゃんと鎮君がピキッと固まる。
「晩ごはん四人分に調整しますね。おじ、お父さんのおかず減らしちゃいましょう」
固まる空気に気がつくことなく、亨君はにこやかに微笑む。きっと、頭の中はメニュー変更の段取りを回しているんだと思う。
「兄さん、お皿出すの手伝って下さい。お母さんは……おとなしくビールを控えて接客して下さいね」
「えー。空ちゃんも飲めばいいわよね〜」
「ダメです」
思ったよりきっぱりした拒否が入る。
「兄さん、まだ未成年なんですから、えっと、そ、の……キスする時、その……。キッチン行きます!!」
ヤダ。やっぱり亨君かわいい。
「キスする時?」
鎮君が意味を理解して赤くなっている空ちゃんを見つめて不思議そう。
ヤダ。このカップルイジるしかないくらいかわいい。
「空ちゃんがお酒飲んだら鎮君はキス禁止ね」
「え。んー。アルコールなんか入ってなくても空とのキスにはいつだって酔えるけどなぁ」
はぅっと空ちゃんが真っ赤になってうつむく。それを愛おしげに見てる鎮君。
カメラが欲しいわ。
「兄さん!」
妨害は亨君だった。
「二人ともかわいいわぁ。大丈夫? 空ちゃん」
ダイニングテーブルにビールグラスとレモネード。グラスもビールも新しいものだ。
ぬるまったビールを潤に飲ませることを亨君は躊躇わない。
潤がたまに『兄貴の悪影響受けやがって』と愚痴っているけど、潤もいい影響を与えていない可能性があると思ってる。
手伝いに立とうとする空ちゃんを引きとめておく。
「キッチンに男の子二人よ?」
狭いわ。
「空さんはお客様ですから」
「運ぶの俺がやるし、座ってろよ」
「お母さん、空さんにセクハラしちゃダメですよー。酔っ払って絡んだは言い訳ですからねー」
「あら。ヒドいわ。酔っ払いは無罪なのに」
ねぇと空ちゃんを見れば笑っていた。
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
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青空空ちゃんお借りしました




