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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
723/823

妹談議?

「スグル」

 留学生(ノール)が声をかけてきた。

 最近急激に痩せた気がする。

「ミリセントに自宅練習をすすめたらしいな」

 隆維君の誕生日にケーキを作りたいと無謀なことを言い出したミリーちゃん。

 被害を抑えるために自宅でも練習すればいいとすすめたのは確かだ。

 マリージアさんいるしね。

 作り過ぎたおやつを先日も分けてもらった。アレはきっとマリージアさん製作の見本用だと思う。

 こくこくと認めれば、ぱさりと前髪を払う。カッコつけめ!

「礼を言う。まさか、妹の手料理を食べることが出来る日がこようとは思いもよらなかった。両親や兄たちの怨嗟の声が聞こえるようだよ」

 えーっと、事実を知れば喝采だと思うんだけど?

 なに?

 嬉しいの?

 あの、毒としか思えない不可解物質!?

「くってんの?」

 恐怖だ。

「無論だ!」

 自信満々に胸を張って宣言された。

 いや、ぼーぜんと見上げるしかできねーから。

「かわいい妹から差し出されたものを受け取らない理由などどこにある!?」

「僕は鈴音の出してくるのは食べないよ?」

「妹が可愛くないのか? 妹がかわいそうだろうが!」

 宗がそっと意見を差し挟むとノールは迷いなく批判する。

「妹はかわいいけど、食材を使ったからって食品になるとは限らないって兄がよく言ってるものだから。食べることができないものははっきりそう言ってやるのが優しさなんだよ?」

 宗もキツイ。

 意外にこの二人仲がいいのかも知れない。

「なんて、酷い兄なんだ! かわいい妹が作ったものが美味しくないはずがないだろう? 全て完食する事こそが良き兄としての姿だろう!?」 

 それで最近急激痩せ?

 俺は弟妹いないけど、いたらこんな風な兄になるのかなぁ?

 俺は激甘兄なんだろうか?

 それともドライな兄なんだろうか?

「かわいかろうが可愛くなかろうが食べれることと食べれないことは別だろう? 食べれないものを美味しいという事は妹を騙してるんじゃないのか?」

「くっ! あの子はただ慣れてないだけだ! 兄のために料理を振る舞う優しい子なんだ。数をこなせばきっとーーーー!」

 あ。

「隆維君の誕生日にケーキを贈りたいって練習中だって」

 空気の凍りつく音が聞こえた気がした。

 表現するなら『パッキーン』というところだと思う。

「ああ。今月末だもんね市販品の方が安心だと思うけどなぁ」

 それは頷く。

「どうも、手作りスイーツに拘ってるっぽい」

 こないだの様子を見てると、どんな出来でも食べてくれそうな隆維君の為にせめて食べられるものをと望んじゃうぜ。

「あー。ウチの鈴音もそうらしい。やめるようにって天音が言ってるらしいんだけど、最近、叔父さんが忙しくしてるから隙をついて食材を棄ててるらしいよ?」

 その金額で市販品と言う宗は現実的なんだろうが、同時に女の子の手作りというロマンを砕いてくれるなと思う。

 女の子の手作りに金額なんかつけられないんだよぉおおぅ!


 いろんな意味でな!

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