Wデート マリージア視点
うろな駅が待ち合わせ場所。
なぜ、ピクニックに出かけるハメになってるかは主人兄妹に嵌められた感が強いです。
ミリセント様は何かを眺めては嬉しそうに踊ってらっしゃるし、ノール様は一人で出かけるより他にも女性がいるから安心だろう。とすすめてきました。
すぐるを見つければ、そばに同年代の男女。
三人とも真っ黒な髪で日本人って感じ。
そういちろーがすおーを紹介してくれました。
すおーはデニム地のスポーティな感じ。無理に締め付ける髪型は髪が傷みそうで気になるのは職業病。
気がつけば、女性陣、男性陣で分かれておしゃべり。
これは気楽かもしれないと予感します。
すおーと話しているとそういちろーは山にのぼるのは苦手なのだと、正しくは虫や自然物が少し苦手なのだとそっと笑顔を見せてくれます。
ミリセント様も興味のない環境はあまり得意ではないのでそういうこともあると頷きます。でも泳げるようにはなった方がイイですね。ミリセント様。
雑談中高校を卒業後、入籍予定と聞いて、日本では珍しいのではとつい聞いてしまう。
「そういうお家なの」
すおーは愛しげな眼差しをそういちろーに向けて微笑む。その様子を見ていて思うのは、自分磨きが足りてなくてもったいない!
と、言葉を掛けようとしたら目的駅でした。
『うろな高原』駅で下車。
降りてくる初夏の風。散策しつつ風景を楽しむ。
「すぐる……」
「ただの羽虫だろ?」
「すぐる、なんか……」
「ただの葉っぱ!」
「すぐ……」
「蜂はサッサと迂回! マリーさん、すおーちゃん大丈夫?」
見ていて面白いのだけど、横で「宗一郎さん……」とすおーが謎の嫉妬をしているの。
すぐる、そういちろーが好き?
てっきり私に気があるのかと誤解してました。
申し訳ない誤解をしていたようですね。
応援は出来ませんけど。
ランチは大きな木のそばです。
トチノキというのだと教えていただきました。
うろな町の木だとすぐるが誇らしげです。
そういちろーは疲れたのか、すおーの膝枕でぐったり。賑やかでしたものね。お水とお茶とどちらがよろしいかしら?
ピクニックシートに広げたお弁当。
風に揺れる木々や草花。足元に生える白やピンクのクローバーの花。
「あっちは桜。花の時期は終わってるけど、咲いてるとすっげー綺麗なんだ」
日差しに透ける緑を見上げるのも美しいと思いますよ?
得意げなすぐるの様子にここが誇らしく愛おしいんだというのが伝わります。
「好きなんですね」
サッとすぐの顔に赤みが差します。
「この風景が」
言葉足らずかとつけたすと真っ赤なまま、何度も頷きます。一度でわかりますよ?
「うろなはイイところだからさ!」
最近は勤め先になる企業誘致も増えているのかもしれないとか、夏場の観光としての海。
安心して暮らせる町としての魅力。
就職とかの不安は町にかかる不安というよりは、国にかかる不安。
「頭もあんまりイイとは言えないし、体力が有り余っているわけでも手に技術があるわけでもない」
言いながらちらりとそういちろーに視線を投げてらっしゃいます。そんなに気になりますの?
脈はないと思いますわ。心細そうに自信なさげな背中をぽんと叩く。
「一番の問題はやってみないことですわ」
ないから。出来ないから。と言ってしないのなら何も変わりませんもの。
とりあえずは告白して挫折すれば吹っ切れるかもしれませんよ?
「頑張ってくださいね」




