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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
718/823

GW最終日

 ゆっくりとした仕草。

 君は海を見るのが好き。

「宗一郎さん」

「どうかしましたか?」

 白いロングワンピースにレースショール。少しヒールの高いサンダル。ツバの広めの帽子。

 そこからこぼれるきつく捻った三つ編み。

 今日の服装は彼女自身の趣味じゃないもの。

「似合わないと思うの」

 こぼれる言葉に笑う。

「似合ってますよ」

 彼女の養父である大叔父の趣味。

 そうかしらと不安そうな姿が微笑ましい。いつも自信たっぷりなのに。

 でも不安なのも自信有り気な演技もわからなくはない。自分だってするから。

「髪をおろしましょう! おねーさん!」

 唐突な声に沈黙。

 天音の友達の一人で商店街の長船くんだ。

「ごめんなさい。蘇芳姉様。連れて行きますから、お気になさらず」

「天音ちゃん、あの髪型は絶対もったいないって!」

 長船くんの声が遠ざかっていく。その感想はわからなくはない。

「あの子、櫛とブラシ持ってた」

「そうだね」

 楽しそうに蘇芳さんが笑う。

「やってくれるつもりだったのかしら?」

「たぶん」

 美容室の子だからってできるとは思わないけど、手に覚えはあるのかもしれない。

「この町の人たちって少し変わってるのね。……違うか。人懐っこいっていうか、おおらかな感じかなぁ」

 そう言って、軽やかに笑う。

「髪をおろしてみる?」

「そしたら、そのままハイキングでも行く?」

 ちょっとムゥっとする。整備されていない野外活動は苦手だから。

「その格好で?」

「この格好で行けるトコまでね」

 くるっとワンピースが揺れる。重ねてあるレースが風を含んで揺れている。

「芹香ちゃんと約束あるよ?」

「そうね。許してあげる」


 ゲームのレベル上げとクエストをしてる間に長船くんが楽しそうに蘇芳さんの髪をいじっている。キツく結った髪を丁寧にほぐしていく。蘇芳さんの髪は所々にクセがあって少し不思議なウェーブを描く。

 それが面倒だからいつも三つ編み。それを見ながらトライトライと歌ってる長船くん。

 芹香ちゃんがちょっと邪魔そうに見てるけど、長船くん、スルー。

「涼維が連絡寄越さないー」

「むこうは祝日じゃないだろー」

「ちーちゃんもあれっきりだよねー」

「はくじょーものー」

 ぐだぐだと隆維君がごねてる。長船くんと碧くんが適当に相手をしてる。

「鎮兄は空ねぇと掃除とか学校とかで最近かまってくんねーしぃ」

「恋人優先は普通だけど、掃除と学校の優先順位なんだ」

 長船くんが笑う。弟さんを駅まで送った碧くんも。大阪の家までは飛鳥さんが送るらしい。

 明日の仕事は夕方からだから問題ないと言ってたなぁ。夕方から行って朝に帰って来るらしい。

「家事分担はこなしてから動いてると思うな〜。んで、学校。その次はバイトだろ〜」

 僕から見てると特に干渉率が変わったようには思わない。

 隆維君は涼維君と戯れている時間が長かったから、一人時間が少し苦手なのかなとも思う。

「りゅーちゃんのさびしんぼー」

 碧くんが笑う。隆維君は拗ねたようにうっせぇと返す。

「あー。木金も休みならいいのによー」

 長船くんがこぼすと中学生組の視線が集まる。

「どっちにしても休みなく登校してるだろ」

 些少の誤差はあれどみんなに突っ込まれてた。

「雨の休日は行ってねぇ!」

「台風は?」

「対策しに行くに決まってるじゃん!」

 長船くん……。



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