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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
717/823

GW立夏の日 宇美

 立夏。

 今年の夏は梅雨はどうなるのかと窓のむこうひろがる空を見上げる。

「おーい、宇美、梅雨ちゃんのカルテは~?」

 信弘さんの声は階下から。

 だいたいは電子カルテだけど、紙カルテも併用している。

 読んで時々置きっ放しにして次の作業。ちょっと困ったいつもの癖。だから大体の予想は立てられる。

 今日もソファーに数枚のカルテ。

 問題はその上にくつろぐ『猫たち』の姿。

『ナニ?』

 と、挑戦するような眼差しで私を見上げてくる。

 中学生まではプライベートスペースである二階に上がることはあったけれど、高校になってからは気恥ずかしくて重を連れ戻す時しか上がっていない。

『付き合う』ようになって久々に上がった二階は相変わらずの猫屋敷。信弘さんの生活は猫に支配されてるんじゃないかとまで思う。

 でもね。伊達に生まれた時からペットショップ育ちな訳じゃないのよ。

 気ままな猫たちは欲望に忠実。チラリ好む遊具やオヤツで気をそらす。

 叱られると知っているから、紙カルテは踏まれているだけで済んでいる。

 のっているのがあのスカイフィッシュじゃなくて良かったと思う。

 ひょいと抱き上げてカルテを回収。腕の中で不満の声をあげるのは無視。

「えー。時雨君のカルテじゃない。梅雨ちゃんのはどこよ?」

 手書き部分があるのを確認するとこれは入力済みか確認しないといけないからキープしておく。

 よく置き忘れるポイントは、次はトイレ側の棚か。

 仕事熱心は結構だ。

 おじーさまも信弘さんも。

 本当にどっちの仕業よ。

「少し待ってね」と階段で声をかけておく。

 トイレ側の棚の前にまさかとは思うけれど、三階の信弘さんの私室を覗く。PCが設置してある部屋なので猫は基本立ち入り禁止。

 いろんな本や壁に貼られたうろなの海のポスター。

 コルクボードに貼り付けられた写真は猫がメイン。

「あら? てぶくろちゃん?」

 スクール水着で短パンを履いて屋上で猫洗いしてる写真。そこに写っているのは前足の白い黒猫と小学校低学年の私。

 かさりと紙の音。

「あら。やっぱりこっちにも落ちてたわね。本当に仕方ないんだから」



「はい。信弘さん」

「ああ。ありがとう。どこにいったのかと思ってたんだ」

「トイレ側の棚に置きっ放しだったわよ」

「あー、あそこか。ありがとうな。宇美」

 かりかりと頭を掻く。その眼差しはすでに書類に夢中。

「ご褒美は、なし?」

 たまにはねだっちゃおうと思う。

 キョロキョロと周囲を見回す。営業時間外だから誰もいないのに。

「ご褒美?」

「夏祭り、一緒に行きましょうね」


『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

より梅雨ちゃんお名前お借りしてます

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