ミリセント 日生のお家のおやつ時間
その少女は私と同じ癖のない黒髪を長く伸ばしている。
初対面の時には気がつかなかった。
この少女。
私の敵だ。
色目的にはつまりコレがリューイ様のタイプなのかと悩む。
「二人とも、どうかしたのか?」
リューイ様が聞いてくる。
その傍らには共に住んでらっしゃるという高遠様の弟さん。
「おやつにしようぜ」
テーブルセッティングはすでに終わっていて、お手伝いできなかったことが悔やまれますわ。
並べてあるおやつをリューイ様が説明してくださいます。
きゅっとかわいらしく捻って焼いてあるのは『春巻きの皮のチョコ包み』『春巻き揚げ(バナナとチョコポテトの二種)』カスタードの海に浮かぶ『茹でメレンゲ』そして『かしわもち』
「お手軽スイーツ~焼きメレンゲは時間かかるからねー」
私のためにここまでと思うとじんわり胸が熱くなります。
「統基はかしわもち、ふつーのあんことみそあん、どっちにする?」
「統基はみそあん好きだよな」
高遠様が弟さんを溺愛。その様子を眺めるリューイ様は淋しげです。
リョーイを思ってらっしゃるんですね。
お優しい、お兄様ですわ。きゅんきゅんします。
「ミリセントさん、どうぞ」
差し出されるリューイ様の隣の席。少女はにこりと余裕の笑顔。
「私はこっち」とリューイ様のもう片方の場所を陣取る。
その余裕を示す態度がいらりと感情を逆なでしますわ。
それでも、それでも、ここで私が怒ればそれこそこの少女の思うつぼ。
「こっちでもいーわよ?」
言葉をかけてくれたのは少女より少し年上に見えるプラチナブロンドの少女。
彼女の指し示した席はリューイ様を直視できる正面席。
それでもそれはリューイ様とこの少女のじゃれあう様を見せ付けられるカタチになると気がつかずにはいられなくて悩ましいのです。
「ミリセントは茹でメレンゲより焼きのほうが好きだった?」
お見舞いお菓子で焼きメレンゲは時々いただいてました。
覚えていてくださったのだと思うと嬉しくてたまりません。
「リューイ様のお手製ですのね」
「まぁねー。口に合うといいんだけど」
にっこり微笑まれてぽうっとのぼせます。
ああ。リューイ様が私のために。
「明日はオレンジゼリーかプリンな」
「プリンー!」
かしわもちを食べていた統基さんがはしゃぐ姿を見守るリューイ様は誰よりも素敵でした。
▫︎◻︎
「りゅーちゃん」
「んー?」
「アノフタリガコワイ」
「そだなー。ま。かわいいんじゃね?」
「いつか刺されるわよ?」
「えー。天音、心配してくれんの?」




