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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
709/823

出会い 早川英

 ヒールの壊れた靴を片手に確認してる女性。

 ふわりとしたブラウンの髪。

 シンプルなワンピースは膝下十センチくらい。

 靴なら直せるからと声をかけた。

「ありがとう」

 そうぎこちなく、不審げに動いた赤い唇に惹かれた。

 ウチは靴工房で父さんに頼めば直せると思ったから。

 父さんが言うには職人の手によるハンドメイドシューズだと言う。

 楽しげに作業する。父さんは靴が好きだ。

 彼女はピンっときつい感じ。

 それでも、母さんと会話してた時に見せた笑顔はかわいくて、これがギャップ萌えとか考えてるあたり宗の影響を感じる。

 頬や鼻の頭に散ったそばかすが可愛いと思った。

 彼女を送りながら、ポツリぽつりと話題を探す。

 しっかりと決まった未来を見据えている彼女はかっこよかった。

 周りはやりたいこと、回避したいことを決めているようで取り残され感がハンパない。

 両親のようになりたいと語る彼女の言葉に自分がどうなりたいのかを考える。

 物心ついてから一度も『跡を継げ』とは言われなかった。

 どちらかと言えば他の仕事を見つけろと言わんばかり。好んで苦労しなくていい。と。

 仕事ってなんだろうと思う。

 もちろん、生活していくためにはお金が必要で、それが無限にあるわけじゃないのもわかってる。

 母さんだって昼の数時間はパートに出てる。

 事務をして父さんが必要だという機材を買う資金を集めるのを手伝って。

 でも、何かを作り出す父さんを凄いと思うし、それを支える母さんだって凄いと思える。

 自分はと、振り返れば何もない。

 ただ、周りに流されて、無難に生きてきて、無難に流れていくつもりだった自分がいる。

 なりたいものがわからないなんて、好きなものが見えないなんて普通だと思っていたんだ。

 そんなだからか、眩しいと思った。

 まっすぐに理想を語る姿が。

 将来の夢。

 父さんのようになにか見つけられるのか、母さんのように誰かを支えることができるのか。

「あー。わかんねー」

 不思議そうに宗と留学生が見てくる。

「提出物終わってないの?」

「いや、ちゃんと済ませている。たださ。進路を悩んでるんだよ」

 学力で行ける大学。

 その先にしたいことはあるのか?

「したいことってなんだろうって思ってさ」

「好きなこととしたいことは違うこともあるし、できることだって違ったりするわけだから、自分でしか見つけられないだろ?」

「いろいろ体験してみるしかないのではないか?」

 答えはもちろん曖昧で答えになりきれない答え。

「ありがと。二人とも」

 それでも、実際それしかないんだろうと思う。

 また、会えた時、夢を見つけたって言えるかな?

 言えないかも知れない。

 それでも、彼女にまた会いたい。





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