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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
706/823

長船祥晴 四月穀雨の朝

 雑草を抜いて、盛りを過ぎた花は毟って、最後に掃き掃除。

 春の揺らぐ天気で水やりの必要はなさそう。

 無雑作に払い落とし集めるのを手伝ってくれているのは伊藤隼人くん。

 去年からちらちら手伝ってはくれていたけど、どちらかというと遅れている勉強優先。それは当然だからいいと思う。

 ふっと気がついたらいたりいなかったりで存在感が薄めな子だ。

「うむ。これでよかろ」

 時々、口調が存在感たっぷりな不思議さを醸しだす。

 これも一種の厨二病かなとも思う。

「さんきゅー」

 それでも植物の扱いは確かで、安心出来る。コツを聞いたら『わかるからの』とよくわからない答えが返ってきた。

 いや、話しかけるのはわかるけどさ。おれには返事は聞こえないからなぁ。

 少なくとも卒業して一年は大丈夫だろう。

 ま、一年生の岡本さんも放課後は来てくれるんだけどね。どっちかっていうと彼女は自由度の高さで部活選んだっぽいからなぁ。

「おはよう」

 ひょっこり顔を出したのは碧。

 後ろについてきてそうな奴はいない。

「りゅーちゃんは体調崩して休み」

 後ろを気にしていたおれに苦笑とともに教えてくれた。

 不幸なリア充である。

 しかし、背後からの突入者はいた。

「園芸部入ってあげるわ!」

 ダンっと鉢植えを蹴倒しそうな勢いで。

「いらん。ミラちゃんは運動部か元気なとこに行け」

 なにかと動きが荒いんだよ。有り余ってるだろう。体力!

 不貞腐(ぶーた)れても知らん。

「むー。はやはいいのに?」

「隼人くんは扱い上手いからな」

 苔類を半壊させたミラちゃんとは違うのさ。あと一応、先輩だからな。隼人くんの方が!

 むぅっと膨れたかと思うと一歩踏み込んでくる。

「苔オタクのバカー」

「誰が苔オタクだ! 誰が!?」

 失敬な!

「えっ!?」

 驚きの声は複数から発せられた。

 どういう反応だ?

「ミラちゃん、教室行こう。あ。おはようございます。先輩がた」

「おはよう。岡本さん。今日は天気コレだから放課後は無しね」

「はい」

 不安定な天気だし、安全に帰れた方がいいだろう。

「じゃ、隼人くんも教室行こうか。碧、手を洗うからちょっと待ってて」

 隼人くんから「うむ」と返ってきて、碧は頷いてくれた。

「鞄は教室?」

「いや、そのへんに置いてある」

 濡れないであろう場所に置いてあるからな。





「なんで園芸部に入りたいのかねぇ?」

 ミラちゃんの動機が理解できなくて首を捻るおれに碧が苦笑する。

「アレでも日生の家ではハーブとかのお世話してるよ。美味しく調理されるものを自己生産って」

 へぇ。

 意外だ。

「苔は基本剥がして処理って思ってるっぽいけどね」

 許すまじ!!

 やはり拒否りたいぞ!?


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