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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
705/823

長船祥晴の土曜日午後

 園芸部は相変わらず少人数。少人数なりに手入れを考える。

 伊藤隼人くんが去年から入部はしてくれているけれど、部に来るのは気まぐれだ。

 ま、勉強が遅れぎみな彼は周りについていくための時間が必要だっていうのもあるらしい。

 ま。部活より勉強優先も当然だよな。

 麻衣子ねーちゃんに呼び出されてじーちゃんに出掛けると言いおいて店を出る。

 天音ちゃんとその弟妹出くん鈴音ちゃんを送ってきたらしい隆維と碧がいた。

 よぉと手をあげれば、おうっと返ってくる。

 体調を問えば歩く事は必要だろうと笑われる。保険あるしと指差す先は碧だ。

「とーさん帰って来てるのと買い食いは別モンだよなー。コロッケか、鯛焼きか。悩むー」

 と隆維は楽しそう。

「またちーちゃんと揉めたからちょっと落ち込んでるんだよ」

 またかい。

 ぶすっと不貞腐れる。

「っせーなぁ。そんなこと気にしてたなんて知らねーもん」

 オレは何も言ってねーぞ。

「視線が言ってる!」

「そんなもん聞き取られてもこっちは知らんわ!」

 戯れる会話。

「おじさん帰って来てるんだ?」

「まーね。しばらくはいるらしいよー。出掛ける要件とか増えたっぽいけどさー」

 何してんだかーと隆維がボヤく。

「千秋兄も本格的に留学するってまとめての休暇シーズンだけしか帰ってこねぇって言うしさ〜」

 はぁっと息が漏れる。

「口煩いのが減るんだけどさー。妙に突き放された感じー?」

「千秋にーさんいつ行くの?」

「んー。もう出たよ。予定が合えば夏祭りには帰ってくるつもりだって言ってた」

 えー。ちゃんといってらっしゃいくらい言いたかったなぁ。

 麻衣子ねーちゃんたちに怒られっぞ?

「暁にーが謎のちーちゃんからの連絡断ちを宣言してるんだー」

「なにそれ」

 碧に聞いても碧も首を傾けるだけだ。

 買い食いはコロッケにしようとまとまったタイミングで雑貨店から出てきたねーちゃんが隆維を呼び止めた。

「リューイ様」

 様付けですかい!?

 隆維は不思議そうな表情を作って、にっこり笑ってみせる。見慣れてなければ、無邪気な笑顔だ。

「ミリー」

 ぽぅっと頬を赤らめるねーちゃん。

「あ、あのこれ。リューイ様に一番に食べて頂きたくて」

 可愛らしいラッピングされた包み。

「ふーん」

 うわぁリア充がいるよ。リア充が。

 碧と視線で会話する。

 かさりと袋の中から出てくるのは濃茶色のクッキー。焦げてるというよりココア色だな。ポイッと無造作な動きで口に放り込む。咀嚼する隆維をねーちゃんはドキドキと見守っている。

 一瞬、動きがぎこちなくならなかったか?

「悪くねぇんじゃね? ちょっとビターだけど」

「もう少し甘い方がお好みでした?」

「うん。甘い方が好きだよ。でもさ。ありがとうな」

 ミリーねーちゃんはきゃあと嬉しそうにはしゃぐとまた作りますわと宣言し、手招いてる尋歌ねーちゃんの方へ「あら? なんですかしら」と呟きながらよって行った。

「鈴が作っても食べてくれる?」

「鈴? そりゃ食うけど?」

 何言ってんの? という顔で隆維が返す。

 鈴音ちゃんは嬉しそうに笑って天音ちゃんの腕を取る。

「おねーちゃん帰ろ。また明日」

「おう。また明日な」

 山辺は週末基本日生の家で過ごしてるよなー。

「それじゃあ長船くん月曜に学校で」

「ああ」

 そんなふうに山辺たちとは別れる。

「碧ちゃん」

「ん?」

「飲み物プリーズ」

 !?

 どうした!?


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