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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
704/823

料理部校外活動ー♪

 土曜日。

 岡本さんと待ち合わせて麻衣子ちゃん家へ。

 有坂の千鶴ちゃんと中島千佳ちゃんは料理ができるから監督役に。

 一年生はミリーちゃんと近所のよしみで尋歌ちゃん、ついでに誓ちゃんと千歳ちゃんも混じってる。

「少し、多いかしら?」

 首を傾げるのは紬ちゃんと愛子さん。

 必須メンバーは三年生組と、ミリーちゃん。

「課題はクッキーだぁああ」

 場所提供の麻衣子ちゃんが相変わらずのテンションだった。

「日生んち借りれたら良かったんだけどなーちょっと行くのめんどくさいからあたしん家だぁ」

 商店街組のものぐさ感だ。

「リューイ様のお家」

 ほぅっと吐息をこぼすミリーちゃん。ちなみに愛称で呼ばれる理由がわからないと言う彼女は萌ちゃんの「もっと仲良くなれる気がするから」という微笑みに「しかたないですわね」と意見を変えた。

 麻衣子ちゃんたちは問答無用でディザさんと呼ぶこともミリセントさんと呼ぶことも放棄し、『ミリーちゃん』一択だった。「いや、長いし」という理由で。

 とりあえず、個人的に日生の人間を知っている商店街組の眼差しは微妙である。

 『リューイ様』=『日生隆維』

 小学校二年、だったかな? そのあたりから成長を見てる双子の片割れでお互いだけいればいいのって感じだった小学校時代。中学でも相変わらずだけど少しづつ距離をとりつつあって、隆維が体調を崩したあたりからおかしくなっていた気がする。

 基本的に何しでかすかわからない上に注意をし難いコトをやらかす印象だ。突拍子もない行動が多く、なんか、ロクでもないことをしたんだろうけど、イマイチ何しでかしたかつかみどころがない感じ。

 あっさり『家出』とか『女癖悪い(町の外で)』とか『苛めっ子』『リア充』のように『最低』と文句を付けようのある上双子組とは違うのである。

「んー。隆維情報ならヨッシー呼び出してもいいなぁ。何処がいいのかわかんないけどさ、恋する乙女の味方なのだぁあああ」

 麻衣子ちゃんは元気である。

 材料を整えながら紬ちゃんがクスッと笑う。

「うまくいくといいわね」

 困惑した表情でミリーちゃんはありがとうございますと微笑む。

「あー。いっつーとうまくいってなかったんだっけ?」

「あら。彼が入試会場まで行けただけでも進歩だと思ってるわよ?」

 話題を振った麻衣子ちゃんに向けてフッと紬ちゃんが息を吐く。

「緊張しすぎて答案がすべて白紙で終わったと聞いてらしいわと思ったもの」

 にこりと笑って紬ちゃんが続ける。

「あなた達は勝負慣れしとくといいと思うわよ。恋も勉強もね」



 そして、手慣れたメンバー主導でお料理教室である。

 たまごを白身と黄身に分けるって、割った時点で混ざってて無理だよな!?

 ミリーちゃんは、上手にたまごを割って白身と黄身を分ける。

 なんと、片手でたまごを割っていた。すげぇ。

 分量をきちんと計って手順通りに作っていく。

 この時点では、尋歌ちゃんより手際がいい。有坂中島姉妹は監督しつつ恋話中。

 注意力がミリーちゃんから離れていく。

 イメージは前回は『たまたまかな?』

「うふふ。どう反応するのかしら?」

 ココアパウダーを混ぜたり、チョコチップや紅茶茶葉を混ぜたり。

 きゃあきゃあと盛り上がっている。

 うん。

 男一人は居心地が悪い。





「いっつーめ」

 麻衣子ちゃんが根性なしめと逸美を責める発言。

「麻衣子ちゃん、それでも、逸美なりに頑張ってくれたの。ね?」

 うーんとまだ不満そうな様子に微笑みかける。

「心配は嬉しいけどね、麻衣子ちゃんは『憧れの人』から、卒業できたのかしら?」

「うぇええええ。なんで、そのネタ振るかなぁ。ちゃんといつかいい出会いが待ってるんだもんねーだ」

 そう言ってそっぽを向いてしまう。耳の先が赤くなってるのが可愛らしい。

「言葉にして伝えないと伝わらないよ?」

「わかってる。だから伝わらなくていい。でもさ、紬はいいの? いっつーも紬が好きだよ?」

 ばたばたと荒い動き。ぽんぽんと型抜きで生地を抜いていく。

 知ってる。

 頑張ってくれたのも知ってる。

 逸美は人が多いところがダメでほんの少しの誰かしか受け付けない。

 ほんの少しの誰かになるのだってすっごく時間がかかる。

 他人をすっごく切り捨ててくる逸美は受け入れたものだけに甘く固執する。

 その中で、特別。になれたのは嬉しいの。

「そう。私のためにね、頑張ってくれたの。私ね、逸美が好きよ」

 たぶん、私は欲深い。

 特別が実感したかった。

 振ったぐらいで棄てられる立場じゃイヤだった。

 こう、振り返ると私酷いわねぇ。

「じゃあ!」

 うん。麻衣子ちゃんが眩しい。

「逸美の中でね、私の位置が、特別感がね、千秋や鎮君より上だといいなぁって考えて、ソレに鎮君を利用するような人、なのよ? 私」

 あら?

「ミリーちゃん二色クッキー? 上手ね」

 二色の生地をあわせて形を作っていて、キレイに形はできている。

「面白いですわ」

 ちらりと視線が私を斜め見る。

「殿方を試すのは嗜みですわ。一番で、特別でありたいのだって当然ですわ。おねえさまが間違ってるとは思いませんわ」

 

 その後は適当に順番を決めてオーブンでクッキーを焼いていく。(一部、商店街自宅のオーブンで焼くという暴挙にも出たけど)

 焼いている間にラッピングの準備やデコレーションの準備。

 英と栞ちゃんには自宅で焼けるようにラップで整形し他の生地を焼いている間冷凍したものを持って帰らせることにした。


「リューイ様に食べていただきますのー」


 嬉しそうなミリーちゃんを見送って、残されたクッキーをひとつ手に取る。

 実にキレイな出来だ。思ったより薄いからか、焼けすぎかもしれないけれど、許容範囲。

「悪くないんじゃないかしら?」

 英を安心させてあげようと思ってそう告げたタイミングで、

「にっが!」

 え?

 麻衣子ちゃんが慌ててココアを飲んで「あっつ!」とお約束なヘマを。

「あっつーい!!」

 ココアこぼしてるし。

「あー、味覚死ぬーーーースイーツぷりーずぅううう」

 クッキーを食べ、ココアを飲んで甘みを求める麻衣子ちゃんの姿は少し異様だった。

 そっとクッキーを区別できるお皿に移す。

 口に入れる、勇気はなかった。

 高校生達を見ず、私はおばさまにタオルを貰いに行くのだった。

「麻衣子ちゃん、耐性あるのにねぇ」

「耐性ゆーなぁああああ」

 愛子ちゃんの言葉に対する麻衣子の絶叫をBGMに聞きながら、ふっと心配になった。

「隆維君、大丈夫かしら?」

『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

鹿島萌ちゃんお名前ちらり~

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