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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
697/823

なんかアレな感じで料理部に。尋歌

「高校生活慣れたかしら?」

 課題に手をつけていたら宇美さんがおやつを持ってきてくれた。

「うん。なんか、アレなんだけどね、料理部に入部することになるっぽい」

「なぁにそれ」

 あやふやな言い様に宇美さんが笑う。

 デスクの上に宇美さんと入ってきたらしいピナが陣取ってる。

「クラスにいる留学生のディザさんと一緒に」

「あら。凄いわね。サポート?」

 サポート?

 うーん。どうなんだろう?

「麻衣子たちが喜ぶわね」

「私はあんまり得意じゃないのに」

 好きでもない。お料理って家庭科の授業以外はおばあちゃんや家政婦さんがするものだってノブくんのとこにくるまで思ってたし。

 ノブくんの所では宇美さんが作ってくれるか、たまに大おじいちゃんが腕をふるってくれたから。

 受験勉強の合間に梨沙さんがお菓子作りに誘ってくれたら参加する程度だった。

 だから、楽しそうなディザさんには悪いけれど、ちょっと気が重い。

 ほんわりした鹿島さんは料理部と文芸部を掛け持ちするらしい。

 早川先輩が「基本、活動日、週一だから」そう言って笑ってた。卒業した柳本先輩も運動部との掛け持ちだったらしい。

「萌ちゃんなら、料理習ってるし学年一人は最低限調理できる部員確保だ!」

「今は三年生が料理一番苦手なの。活動日は基本木曜日ね。それ以外でもイベントがある付近には追加で活動日ができることもあるわ。ハロウィンとかクリスマスとかバレンタインとか前ね」

 そう教えてくれたのは、有坂先輩。

 調理室が他の日に借りれるかにもかかってるらしい。

 ディザさんは調理室に入ったことはなかったらしく、興味深げだった。

「お兄さまが、男性の心を掴むには胃袋を掴むのがいいとおっしゃるの」

 少しだけ恥ずかしげに語る姿は確かに恋する乙女。先輩たちが喜んだ。

「胃袋は大事だよね。萌ちゃん」

 中島先輩が楽しそうに鹿島さんに振る。

 鹿島さんには好きな人が他校にいて遠恋中。

 好きな人に美味しいものを食べてもらいたいと嬉しそうな姿はほっこりする。

 ふと、思い出した。

「ディザさん」

「はい?」

「中島先輩」

「ん?」

「隆維くんと親戚だよ」

 するっとディザさんは中島先輩の手を取って微笑む。

「リューイ様の好み教えてください。おねえさま」

 後でごたつくより最初が肝心だと思ってしまったの。


「失敗したかなぁと思って」

 宇美さんがピナを抱き上げながら首をかしげる。

「中島先輩の隆維くん語りと言うか、日生家語りって半分ぐらい不仲って感じの言葉だったから」

 褒め言葉らしい褒め言葉は出ず、「えー。やめときなよ」のノリだった。

 女性に軽い、チャラい感じだから、遊んで捨てても気にしなさそうだからと語る中島先輩。

 特別とその他で分けてるだけと有坂先輩がフォローをしてくれた。

 流石に同居してるだけあると思えた。

「あそこの子達はねぇ。いい子たちなんだけど、クセは強いわね」

 私はあんまり関わってない。鎮さんと千秋さんには会えば明るく挨拶してもらうくらい。

 普通に親切で優しい。扱いだって丁寧だと感じる。扱いが雑になるのは距離が近づいてからなんだと思う。

 文句を言う中島先輩はかなり初期から距離が近かったんじゃないかしら?

「尋歌ちゃん」

 宇美さんを見上げる。

「気分転換にお料理しましょうか」

 宇美さんの提案。

「やるからには頑張りたいし、するわ。何を作るの?」

 何がいいかしらねと宇美さんがピナを抱いてくるりと回る。

 調理器具の呼び名と形状を一致させたりカットの仕方の名称を教えてもらったり。

 その日の晩御飯はノブくんに「豪勢だな」と喜んでもらえた。


 気が重い。

 それはフランク、気安い料理部の気風。

 合わせていけるかが少しだけ不安。

「大丈夫よ。世の中いろんな人がいるし、全部好きになれなくてもいいの。みんな不安なんだって思っておけばいいのよ」

 料理部なんて特にそんな感じだわと宇美さんが笑う。

 あれ?

「宇美さんも料理部だったの?」

「そうよ」



『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq


より鹿島萌ちゃんお借りしました。

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