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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
695/823

妹から見た兄。

 一緒に来日した兄は一番歳が近い。

 兄弟の中では勉強もスポーツも平均点で特徴がない。人をたらし込める才能だって特にはない。特に突出した部分のない兄だ。

 上の兄達や親族たちが現当主であるラフが指名した双子。リューイ様とリョーイ。これに反発した。

 第一位はリューイ様とはいえ、リョーイも邪魔で、かつリューイ様への揺さぶりも兼ねて機会があれば、排除しろと言う揺さぶり。

 兄は同じ学園にいるなら。

 私はちょうど体調を崩して検査入院中で様子がみれるなら。

 それぞれにエサをちらつかされて動いた。

 兄はスポーツ中に怪我をさせたり、嫌な思いをさせようとして、自分が重症ゾーンに入って助けられるというヘマっぷり。それでも完治三ヶ月。

 善行も悪行もパッとしない兄である。

 完璧を望まれて、それを目指した長兄には程遠く、それを補う次兄にも及ばず、だらしなく悪戯好きな三の兄のようにもなれない。

 それがこの兄だ。生きてて何が楽しいのかと思う。

 兄の人生。光の当たる場所には行けないだろうと思うから。

 一番手にはまず無理。二番手三番手となることもなく、奇跡の好成績で五番か六番がせいぜい。いっそ最下位にでもなれば注目も浴びるだろうに。

 家族の中ではただひたすらに影が薄い。期待もされてない。

「ほらできた。ロープ編み、サイドな。緩めにしてあるから印象も柔らかく、なるだろう。たぶん」

 確かに邪魔ではない髪型だ。

 兄の選んだ服はどこか直線的。緩やかな甘さは少ない。紺のタイトロングにオフホワイトのシャツにスカートと同色のベストとジャケット。

 スカートには深めスリット。

 コレが兄のタイプなのかと思う。

 メイドのマリージアが笑う。

「あの方にはあの方なりの魅力があるのですよ」

 そう言われてもちっともわからない。

 私は本当はどうでもよかった。

 本家の当主なんて誰がなっても私に影響があるとは思えなかった。

 病室で眠るあの子はまだ小さく見えて年下だと意識した。

 男の子の成長期はこれからだもの。

 点滴の針を抜いた。

 痛みからか海を思わせる青い目が開かれて、私を映した。

 それが出会い。

 その時私は責められることはなかった。ただ、リューイ様は誰がやったか確認できてればいいようだった。

 次に会った時に名前で呼ばれた。屈託のない。いや見えない笑顔で、リョーイに仕掛けたことは気に入らないと告げられる。

 私といるのに他の話題。カッとして突き飛ばした。場所は階段。咄嗟に手を出して私もバランスを崩す。

 数日後の私の謝罪に彼は笑ってたいした事じゃないと言う。

 だから、私は提案した。

 自分が自分の家族に溺愛されているのを自覚していたから。

「私と結婚すべきだわ」

 私は彼を、リューイ様を見ていたい。

 側にいたい。そう思った。その青い視界に映っていたいと思ったの。

 理由なんかわからない。誰かに注目されるのなんて面倒くさいと思ってた。

 でも、彼に注目してほしいと思うのだ。

 ねぇ。

 私を見て。

 私を好きになって。

 貴方にだけ、注目されたいって思ったわ。

 お兄様たちに見られているのは煩わしいだけなのに。


 私は知らない。

 リューイ様が何を好まれるのかを。

 それでも、私を見てくれる眼差しに好意がないかと言えばそうでもなくて、わずかな仕草からその要望を拾いたい。

「他に相手いるんだろう?」

 兄が水を差します。

「家柄が低い方が愛人になればいいんですわ。私、結婚まではいくら遊び相手がいても気にしませんわ。殿方の甲斐性でしょう? 本能かしら?」

 びくりと兄がひるむ。

 兄の許嫁は嫉妬深いから浮気なんて許さないだろう。

 そして、挙式のその日まで一線を越えることも許さないだろう。そこは正しい。

 結婚すれば、遊び相手とは手を切って、愛人は二人までなら受け入れられる。ただ、相手が自分を弁えるならとなる。

 そのくらいを制御できる懐の深さをリューイ様には発揮してほしいと希望してしまう。

 もちろん、そのためなら協力は惜しまないの。

「リューイ様カッコいい」


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