あのね。
買い物を終えて、家に荷物を置く。
夕食の下ごしらえは叔母さんが済ませてから出勤したよう。
室内はいつも通り整頓されている。
うる叔父さんはあれで綺麗好きだから。
そんなことを考えつつ、買い足したものを書き出して冷蔵庫にマグネットで貼りつける。
張ってある必要なものリストから買い足したものを線引きで消していく。少しぐらいならかぶってもいいし、今日は買い物に行くと叔父さんには伝えてあった。
用事を済ませて、二階に準備されている自室へ上がる。
二階には一応、二部屋あって同棲時代はうる叔父さんが私物化してたらしい。
今はそのうちの一部屋を僕用にあけてくれていた。
制服に皺がつかないようにハンガーに掛けてまだほとんど私物のない部屋を見回す。
フローリングにソファーベッド。PCデスクにチェアー。本棚替わりのカラーボックス。
PCは父様からの入学祝い。
僕は、新しい自分の部屋を見回して嬉しいと思う。
「断るならキチンとした対応をすべきだと思うよ? あの状況じゃ彼女が期待する可能性があるってわかってたでしょう?」
隆維くんに尋ねる。
わかっててそう対処したというのなら、彼女だってかわいそうだと思うし、困ることになるのは、隆維くんの好きな人ということになる可能性だってある。
隆維君は気にしたふうもなく、ミラちゃんに復習を強いている。
「俺の場合さー、最終的にミリセントの家も含めて御さなきゃいけないから完全に切り捨てたり、反感抱かせちゃ拙いんだよね。ミラ、そこ違う、頑張って」
理解を求めるような上目づかいでチラ見上げてくる。
「制御出来なくて弟や妹に変な手に出られても困るしさ。ミリセントを妻の位置に入れるつもりはないけど、ほどほど距離感が理想ね」
「おー。ミラちゃん、あたまいー」
「よく出来ましたー。って、答え書くときに違う場所に書いちゃダメだって。答え、こっち」
「えー? いーもん。ミラ、セーカツに困んないだけのお勉強でいーもん」
ミラちゃんがぷーっと鉛筆を投げ出す。
転がった鉛筆。
「もー。仕方ないなー。答えはあったんだぞー。ちょっとだけ休憩な」
「だって、違うって言ったー」
「答え書く欄がちげーんだよ」
隆維くんは問題の番号と答えを書く枠の番号が違うことを指摘する。
「いーもん。おやつ食べてくるもん」
隆維くんはいっておいでと送り出す。
「まー、ココは日本だし、地元じゃないから動きにくいだろうし、弟もむこーで味方は作ってると思うから大丈夫だと思うけど、用心はさ、いると思ってるんだよねー。亨にいちゃんは心配しないで大丈夫だと思うけどさ、ミリセントが迷惑かけたらごめんね」
青い目が気遣わしげ。
「えっと、大丈夫だと思う。ごめんね。ちょっと、心配になっちゃったんだ」
余計な心配だし、おせっかいだったんだと思う。
「ありがとう。ミリセントはさ。世間知らずだから、亨にいちゃんもフォローしてくれると少し嬉しい」
少し困ったように笑顔で頼まれる。
「うん。できる限りフォローするね」
そう答えると隆維くんが嬉しそうに安心したように笑う。
「ありがと」
気遣わせちゃったと思う。もう少し誰かをフォローできるようになれるといいんだけどな。




