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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
692/823

目撃しました。不幸にも。尋歌。

「行ってきます」

 頭を下げるとノブ君と宇美さん、大おじいちゃんがにっこりと笑ってくれる。

 玄関先で梨沙おばさんもいってらっしゃいと笑ってくれる。

 中学からそのままうろ高に入った人だけじゃなく、他校から進学してきた人達も多い。

 見知った顔はそれなりにいるはずなのに、新しい制服のせいか、わかりにくい。

 流石に白髪メンバーはあそこにいるなぁってわかるけど。

 ササッと見回せば、明るい髪色の人はそれなり。

 それなりそつのない自己紹介が流れていく明るかったり、出身校と名前を言うだけだったり、抱負をつけての自己紹介だったりな感じ。風峰くんも同じクラス。少し、嬉しい。

「ミリセント・ディザと申します。まだ、日本語に不慣れですが、よろしくお願い致します」

 黒髪の子だった。

 パッと見に日本人と疑わなかったのは、この町には日本人ばなれした外見を持つ人が多いからかもしれない。

 横文字の生徒はクラスで彼女だけだった。

 ソレっぽい人は数人いて、呼び方をすぐ忘れそうかもしれない。

 下校する時、教室に上級生が顔を出した。

 鮮やかな金髪にブルーアイで、掘りは深めという日本人じゃないわという外見。

「ミリセント、帰れるか?」

「はい。お兄様」

 妹の鞄を迷わず受け取り、兄らしい人はクラス内をサッと見回していた。

「シスコンかしら?」

 あの眼差しは母さまのノブ君に近づく女調査書を見る眼差しに近い。

「妹さんが心配なんだね」

 商店街で買物をして帰ると言う風峰くんと歩く。その少し前をあの兄妹が歩いている。地下鉄の総合病院前駅の入り口が見えた頃に何かに気がついた彼女が速度をあげた。

 中学生の下校時間なのか、クラス替えについてはしゃぐ中学生。つい先日まであの制服に身を包んでいたっていうのに春休みひとつ挟んだだけで子供っぽく思えてしまう微妙な心境。

 私も思った以上にはしゃいでいるらしい。

「尋歌ちゃんじゃーん」

 車道向こうから隆維君が手をふる。横には碧君。

 振り返そうと手を上げる。

 いつの間に道向こうに回ったのか、視界にディザさんが過った。

「リューイ様!」

 抱きつく高校生を目に写した隆維君の表情が一瞬だけ氷点下だった。

「ミリセント。なんで日本にいて、そのコスプレなの?」

「ミリーと呼んでください。この春からうろな高校に通うので、コスチュームプレイではないです」

「えー。うろ高通うって……、よく身内が許可出したね」

「ええ。お兄様もご一緒ですの。もちろん、普段の外出は付き添い付きでなければしませんわ。リューイ様の妻としての身持ちは……」

「ミリセント。俺、その話は断ってるからね」

「でも、気が変わっていただけると思うのです。私は、一族内でも有力な一門の出ですし、上の兄達にも愛されてますもの」

 ディザさんがにっこり。

 少し、引いているのは兄であるディザ先輩。

「ごめん。ミリセント。俺、こっちに好きな子がいるから。ラフも公認で後押ししてくれる相手だから」

 隆維君の言葉にしょんぼりと抱擁をとく。

「出会ったのがもっと早ければ、縁はあったのかしら?」

「んー。わかんね。ミリセントの事はまぁ嫌いじゃないしさ」

 希望を残すような笑顔でもう一度、ごめんと謝る隆維君。

「じゃ、んー。またね。ミリセント。帰ろ。碧ちゃん。尋歌ちゃんも亨にいちゃんもまったねー」

 ぶんと軽く手を振ってサッサと帰路につく隆維君の後ろを碧君がひとつディザさんに頭を下げてから追いかける。

 じっと俯きかげんのディザさんにそっと近づいてみる。

 気まずいかもしれない。目の前でフられたんだから。

 でも、ほっておくのも気が引けた。

「……ぃい」

 ん?

「リューイ様、やっぱり好きだわ……」

 ふと視線が合った。

 マズイ気がする。

「またね。って言ってくれたもの。脈、ゼロではないわよね。シギノさん!」


 名前を覚えられてた!?



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