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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年春
690/823

勉強会

「どうしてかしら……。あの女、おじいさまに気に入られていたわ」

 おじいさまは気まますぎて人の好みが五月蝿いのに。

「毬佳さん、課題を付き合っていただけるのはありがたいのですが、その対価におにーさまの新婚生活におけるおねーさまの人間関係構築を僕は聞かなくてはいけないのでしょうか?」

「そうよ」

 そう告げると、まだ高校生。山辺恭一郎と名乗った彼はしかたなさそうに息を吐く。

 その姿は潤兄さんの父親違いの兄を髣髴とさせる。

「おにーさまの新婚旅行に踏み込み同行しちゃう度胸と根性は評価しますが、自分の行動の失敗は省みた方がいいと思いますよ。僕もエルザさんがまず紹介してくれた毬佳さんに連絡を取ってみたことに少し後悔を覚えて反省中です」

「失礼ね!」

「おじいさまは何をなさってる方なんですか?」

「考古学者よ。古代のオーパーツを求めてるの」

「……それは、また……」

 じろりと睨んだら黙った。

「潤兄さんがたぶん、その研究に関しては引き継ぐのよねー。私はジャンルが違うから」

 兄さんはおじいさまと仲がいい。

 雑談しつつ資料を揃える。

「おじいさまはどういう方針の方なんですか?」

「あら、考古学に興味があるの?」

「興味はイロイロとありますよ? ただ、どういうことなのか、ちゃんと知る機会は得たいと思いますけどね」

 ワンコインレストラン、と言うか多目的スペースなのかよくわからない場所。

 さっき、ランバートと顔を合わせてものすごく気まずかった。

 お互いに無視ったけど。

 もしかして、エルザは同じ大学の通信授業を受ける仲間。ジークと千秋もそう。

 そう、思ってたんだけど、なんか、おかしい気がする。気のせい、かしら?

 ひらりと視界をプラチナブロンドの少女が過ぎる。思考が固まる。動きも固まる。

 少女も私を見て動きを止めた。


「どーしてここにいるの? ティセリア・S・ブロンウィン!」


 ようやく声が出たときにはティセリアの方が驚きから抜けていた。

「ここが家だからよ。あと、私は、芹香。日生芹香よ。マテリア」

 相も変らぬ高圧っぷりにイラッとする。

 ひなり?

「ねぇ、千秋って」

「兄よ」

 唖然とする私に追い討ちをかけるように恭一郎が言葉をもらした。

「知らなかったんですか」

 し、知らなかったわよ!

「まぁいいわ。私は滝瀬毬佳ね。ランバートがいたのも驚いたけど、セリカもいたって言うのは驚いたわ」

「私も驚いたけど?」

 ティセリアが驚かれたのは心外だという表情で頭を揺らす。

 外部に出てるらしいという話はおじいさまに聞いていた。おじいさまに連れられてお茶会に出席したのは二回。

 ほとんどが親族に会うのが目的で人にはあんまり会わなかった。

 一回目はグリフとランバートそれとルーカス。ウォルフにも会った。グリフを除けば未婚者で見合いみたいなものなんだろうなと思わせられた。

 二回目はこないだの夏でティセリアに会うためだった。いきなりの呼び出しで迷惑な気はした。

 それが夏。

「お邪魔してるわ。セリカ」

 とりあえずは挨拶だろう。

「ようこそ。毬佳。ゆっくりしていくといいわ」

 胸を張って手を腰に添えて言うセリフがそれなの?

「芹香さん、すみませんが、今まだお勉強中ですので」

 恭一郎の言葉にティセリアが頷く。

「ごっめーん。べるべる待たせてるんだった。きょういっちゃん、またねー」

「ええ。また」

 軽く挨拶して去っていく姿からはそこまでの高圧さは感じない。ちょっと生意気な少女という感じ。

「べるべる?」

「僕の妹ですよ。芹香さんと同じ学年で学校は違うなりに仲良くさせてもらってます」

 ふーんと思う。

「どうやったらあの女排除できるかしら?」

 じっと見てくる視線に無言で『なに?』と聞いてみる。

「周りに排除されますよ。そーいうこと言ってると」


 だって。


「私の兄さんなのに」


 盗られた気分が強いのよね。


 それにしても。

「ああ。世界って、狭い」

 呟いて身体を伸ばす。

「……本気で、……言ってるんですねぇ」

 恭一郎がシミジミ頷く。その姿がなんか無性にムカついた。

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