妹の婚約
「むーん」
ソファーでクッションを抱きつつ、片手でスマホなりゅーちゃんが唸る。
ころりころりと不満げな転がり。
「どーしたの?」
「碧ちゃん……ちょっとさ。うん。まださぁ。早いと思うんだよ」
「なにが?」
床を転がるのをやめて体を起こし、マジな目で見つめられる。
「ミアの、婚約」
ミアちゃんは芹香ちゃんよりひとつ下だ。
「ミアから言い出したらしいんだけど、周りもそれを受け入れるっつーか後押しするってさぁ、何考えてんの?」
不満そうに対話を続けているらしい。
「しかも。鎮兄達よりひとつ下だって!」
きぃきぃ。
そんな感じで文句をつけている。
「挨拶こーい」
「無理だろ」
ココは日本。今、ミアちゃんはヨーロッパのどっか。
日本まで挨拶に来いとか無理。
つーかそれを聞いて思ったことは、
「しーちゃんはお付き合い後の挨拶とかしてんのかな?」
むこうの家族に。
「んー。既成事実的認識じゃね? 特に言ってもなければ、隠してもない。俺、ミアやノアの相手がそれやったら許さないけどね」
不満げに言ったあとに息を吐く。
「鎮兄にはそーいう発想が欠落してるとこあるから」
「鈴音ちゃんの件は?」
続けて本人のことも聞いてみる。
「んー、きょういっちゃんとおとーさんには話通している状況。おとーさんがラフのこと嫌ってるせいで面倒なとこだけどね〜」
抜かりはないらしい。
ばふんとクッションを床に叩きつける。
「あー。相手が見えなくてうぜぇ」
りゅーちゃん。今りゅーちゃんが面倒な兄と化してるよ。




