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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年〜2015年冬
680/823

対話後千秋

 夜の浜辺で寝そべって。

 服に沁みてく海水を感じる。

 波の音が心地イイ。

「入水自殺か?」

「ばーか」

 健の言葉に笑って返す。

 やってきた波を拾って健にかける。

「タバコやめろ」

「ったく」

 舌打ちして近づいてくる気配。

 仕方なく身を起こす。

「風邪ひくぞ」

「多分大丈夫だよ。少し、反省中だからほっといて」

「へっ、めっずらしいなぁ」

「うん。ちょっと、鎮との話し合い中にシチュ萌えした自分にプチ嫌悪感が……」

「あー。欲情でもしたのかよー」

「うるせー。猛省中だよ」

「……。男いけたっけ?」

「……。女の子のが好きだけどね」

「あー。最近のカッコは相手の趣味か?」

「セットで奢って貰ったからね」

「人はそれを売春と言う。ま、稼ぎはいーんじゃね?」

「そー、いうんじゃ、ねーよ。ま、授業料は授業料か?」

「バカじゃね?」

 健は軽い感じでからかってくる。

 それが、ホッとする。

「否定はしないなー。しばらく距離あけて、ちゃんと落ち着かねーとさぁ、空ねぇに当たっちゃいそーだし、ソレかっこ悪いしさ」

「あー。鎮とっちゃやだって?」

「まじガキくせー。でも、本音はそこなんだろーなぁ」

 波は寄せては返す。

 それは終わりない永久運動。

「変えたいんだ。今のままじゃダメなんだ。それなのに俺は何も持ってないんだよ」

 古い友人と思っていた相手に触れられる。

 なんの抵抗もできないままに馴染んだ身体が裏切っていく。

 どーしてと問えば、『お前たちは』、『壊されるためにある玩具だろう』と笑われた。

『そのためにいるんだろう』と笑われた。

 ふざけるな。

 俺も鎮も誰かの玩具なんかじゃない。

『お前たちは同じだろう』

 笑われて、悔しい。

 逆らえば痛みを与えられる。だからって、受け入れるのは嫌だった。

 それを、その状況を『普通』と受け入れるのは嫌だった。

 アイツは『庭』に資金を落とす。

『庭』は望む成果を出資者(アイツ)に差し出す。

 差し出す成果がなければ、望む『玩具』を。

 研究を重ね続けるには資金は必須。

 資金がなければ誰かを救い幸せを求める技術になるかも知れない希望は潰える。

 差し出す『成果』差し出しえる『玩具』納得させられる『説得』

 積極的に『玩具』としなくとも、そう扱われても誰も違和感を抱かない。その状況を普通と容認している。オカシイだろう?

 エルザが、玩具と扱われて普通に微笑むのも。そんな状況、裏で人を憎んで嫌うのは当然だろう?

 どーしてそれが必要なのか理解できない。

 オカシイだろう?

 なんでアリアは罪悪感を教えられない?

 いいことも悪いこともその場所の価値観だよと説明されても納得できない。

 俺に力はない。無力だ。

 全面的に『庭』を否定するには『治療法を、抑止を完成させたい』と自分以降の子供たちのために自らの体すら切り刻んで実験体として研究を重ね続ける彼女を知った。

 私財を投じて何もかも売り払って研究に没頭する研究者もいる。先の治療ケースの助けになるのならとギブソンはギリギリまで自分の苦痛を記録し続けた。

 そこを居場所として救われたと感じている者も少なくなくて。

 だからこそ、善意で、開発される技術目的で、時に研究者のカリスマで資金を集める。

『助けるために今資金がいる』

 事実だろう。資金源として進んで体を差し出す者は他に行き場のないものばかり。

 資金が許せば、『魔女すら蹂躙できる』そうアイツに教えられて、このままじゃ芹香すらそう扱われると感じた。

 きっと芹香は『そうあるべき』と考えたならその状況を受け入れるのは想像できる。


 そこまで、守られる?

 ダメだろう?

 俺が兄なのに。


「千秋」

「んー?」

「本気で風邪ひくぞ」

 ああ。それは、困るなぁ。

 ホントに

「俺は何もできないんだよ」

「はいはいっと、水気重くて起きれねーなんて言うなよ?」

 誰がいうかっ!




「鎮はさぁ、空ねぇがいたら大丈夫だと思うんだ。うわっ砂がうぜっ」

「バカなマネしてっからだろ」

「きっと、俺の言葉なんか届かない」

「日頃からいじめすぎてっからだろ? 自業自得だって」

 ムッとする。

「少しは慰めようとか思わねーのかよ?」

「思わねー。慰める理由もないし、キモがるだろ?」

 ものすごく納得した。




『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より空ちゃんお名前お借りしました。

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