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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年〜2015年冬
677/823

対話 鎮vs千秋②

 音響室。カラオケルームって呼んでいるけど、そこは伯父さんの楽器コレクションやレコーディングルームを兼ねている。

 最低限楽器には親しんでおくことは隆維達の実家では当たり前のようでミアノアと隆維涼維がたまにセッションぽいのをしてたりしてた。

 ちなみに兄弟で苦手なのが自分だけだなとちょっと自嘲する。いや、芹香も苦手だ。

 千秋はグリフ義兄さんたちの方針で音楽や観劇、乗馬と幅広く『嗜み』として触れていた。俺はどうもうまくハマれなかったけど。

 興味を持ったものにはかなりのこだわりを持って収集する伯父さんの恩恵は大きい。

 機材揃ってるからなぁ。


「上を目指してどこまでいけるか。そーゆー意味ではサッサと諦められる環境だなって思うよ」

 確認するように楽器の様子を見ている。

「千秋?」

「だからさ、料理に本気になる気もなかった。楽器も、そう。好きだけど、熱は持てないって早くわかった」

 ぽんと置かれている楽器のひとつに触れる。

「僕はさ、負けるの嫌いなんだよね」

 知ってる。

 だから、練習を重ねる。たまになんでそこまで拘るのかわからないくらい練習を重ねる。舌が使えないなら耳と目と触感を駆使するとか言って、珍しく練習に付き合わされた記憶がある。……試食を命じられただけだけど。

 本気でないけど、手をつけてしまえば凝るのは伯父さんもお前も一緒だと思うんだ。

 俺も練習とか訓練とかで結果が出れば嬉しい。できれば、一度で、三回失敗すれば次は見向きもされない。それがコワイ。


「いろいろ、伯父さんにはかなわないし、お前にだって追いつけない。手ぇ抜かれんのはもっと嫌い」


 睨まれる。


 手を抜いたつもりはないと否定したいのに言葉が出ない。

 手は、抜いてない。千秋の気持ちがいいようにそのバランスに気を使っているだけ。

 運動能力に関しては勘弁しておいてほしい。

 と言うか得意ジャンル違い過ぎじゃね?

 伯父さんは年の功もあるよね?

「いつだって、僕が取り上げるように動けば、しずはあっさり僕に差し出すんだ。だからさ。悔しい」

 ?

 悔しい?

「だからさ、僕の言葉を行動を防ぐように動いたんだろ?」

「え?」

「空ねぇは、とられたくなかったんだろ?」

 ふわりと笑顔。

 仕草で指示されてドアをロック。

「僕にそんなことする気はないって言ってても信じられなかったんだよな」

 手招きにそばによる。滅多にない距離感は多分、心の距離感とまるで違う。そばに寄れば手が絡みつく。

 そばにいていいとしてもらうのは嬉しかった。

「それが僕が思うしずとの距離感。僕はさ、何も知らないままでいろってただ何もするなって言われてさ、納得は出来ないんだ。その知らない裏でしずが痛いのも芹香が我慢して受け入れようとするのも我慢ならない。不満を感じたまま、幸せでないことを当たり前に受け入れてそれは自分に当て嵌まらないって振る舞うサマは気に入らないんだ」

 なにを言ってるんだろう?

「千秋?」

 俺は何も痛くないんだけど?

 ああ、でも芹香が我慢しちゃってるんならなんとかしてあげないと。


「うん。もういいんだ。僕がさ、選んだ道が間違って見えても干渉せずに放っておいてくれれば、それでいい。裏で知ってて止めるような行動をしてたってわかったら、説明を求めるけどね。納得できたらいいんだけど、守りたい。知らないでいてほしい。は納得できないからね?」

 千秋の指が髪に触れてる。

 ちっともよくない。

 知らずに関わらずにいてほしいのに。

 また、キス。

「ダメ」

「空ねぇが、嫌がるから?」


 兄弟のキスだよ? そう言って千秋は笑う。


「まぁ、いいけどね」

 千秋はそう言ってするりとはなれる。

「聞かない。しずが伏せたいことはそっとしといたげる。だからさ。放っておいて。しずが気に入らなくても俺が選んだことだから、干渉しないで?」

 なんとなく追おうとした手が行き場を失う。



「大嫌い」




『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より空ちゃんお名前お借りしました。

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