バレンタインデー
板チョコを持っている宗を見かけた。
コンビニ自買いかな?
婚約者なるモノがいるとは聞いていたが……。
モールでのイベント。爆発しろとは思うけど、やっぱり幸せ空気は心地良く、いつか彼女とデートに使いたいとか思うよなぁ。
フッと視線が合った。
つーかロックオンされた!?
せっかく意識を飛ばしてスルーしようとしてたのに!?
「英!」
呼ばれた。
気がつかないふりって、……足速いよ!
運動部にでも入るようにそそのかせば良かった。
「バレンタインに蘇芳さんからチョコレート貰った」
ソレはコンビニで二百円でお釣り返ってくるチョコだよね。
蘇芳さんって相手の人の名前?
ソレで嬉しそうな宗にちょっと泣ける。
「嬉しくて開封?」
聞けばブンブンと横に振られる頭。
聞くんじゃなかったっ!!
それバレンタインチョコなのか?
「バレンタインだからってくれたんだ。ホワイトデー、なに贈ろう」
そう、バレンタインチョコなのか。
喜んでいる宗がちょっと哀れなんだが。
婚約者さん、来年はゼヒ包装してあげてください。
「さっきまで一緒に過ごしてたんだ」
気持ち照れくさそうにリア充が吐露する。惚気る。かなぁ?
「あー、モールのイベント良かったよな」
「んー、気になったんだけど、蘇芳さん人混み苦手だから。海辺散歩して、ネトゲしてた」
「ふーん」
ん?
マテ!?
「今、おかしな単語がきこえたぞ!?」
「あー。やっぱり冬の海ってデートコース的にイマイチだったかなぁ」
困ったような表情で苦笑してても、俺的にはこのリア充がっって心の叫びを抑えるので精一杯。
「いや、そこもだけど!」
「そこもだけど?」
なぜわからん!
「何故にデートでネトゲやってんだよぉおお」
「共通の趣味なんだよ。クリスマスも何気にそんな感じ」
気がつけば頭を抱えてうずくまっていた。
り、リア充のデート……の夢がっ。
「英、道端でうずくまってると通行の邪魔になるよ? でも今日はクリスマスに贈ったマフラー、使ってくれててさ。嬉しかったなぁ」
にこにことご機嫌な姿はまぁいいかと思わせる。
「無限回廊でさ、バレッタを買って、贈ったんだけど、喜んでくれるといいなぁ。長船くんも選ぶの手伝ってくれたんだよ」
「ホワイトデーのお返し?」
祥晴は髪質も考えてヘアアクセ選ぶからなぁ。モノはアタリだろ。クリスマスに見かけて「あのねーちゃん、もさい。髪弄らせろー」とか言ってたけど。
「ううん。今日、蘇芳さんの誕生日なんだ」
「年上?」
「同学年だよ」
年上趣味かと思ってた。
「そういえば英は彼女いるの? 部活、華やかだよね?」
ははん。
残念。
「愛子先輩は気になるけど、俺に浮いた話はない!」
「うわっ。自信満々ぷりがせつなっ」
半分くらいお前に絡まれてるせいだと思うん……、多分、普通に縁はないな。
「あ~。もうじき卒業式かー。とうとう最終学年だぜ~」
「そーだねぇ」
「おまえ、昼飯どーすんの」
鎮先輩がふつーに準備してたよな?
「多分、何とかなるかなー。コンビニでパン買ってくるし。鎮先輩も千秋先輩も僕が包丁持つの嫌がるんだよねぇ」
一人暮らし、自炊できない奴がここに……。
「お、お湯は沸かせるから!」
俺だって沸かせるわ!
「あー。バレンタイン~。平日ならせめて義理チョコが貰えただろーになぁ」
「おばさんが準備してくれてるんじゃない?」
ありそうで切ない。
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
『無限回廊』
うろなバレンタイン狂想曲2015
http://book1.adouzi.eu.org/n4385cn/
ショッピングモールのイベント
ちらり
お借りいたしました。




