クリスマス傍観
そういっちゃんの婚約者はきょういっちゃんの元婚約者。
芹香はゲームで仲良くしてくれてるおねーさんの来訪に嬉しそう。
そういっちゃんのデートを潰していいのか?
天音は鈴音を連れて来ただけらしく愛菜とクリスマスの挨拶の後、遠縁のお兄さんが迎えに来ていた。
で、ふらっと見るときょういっちゃんがミホちゃんの手伝いをしてたりする。
ミホちゃんクリスマスイベントとか好きだよね。特に人いっぱいいる感じが。
そういっちゃんの婚約者のねーちゃんは結構もさっとした感じで祥晴が「あの髪を弄りたい」とヤバい人になりかけてた。
「髪形ひとつで印象変わるしね」
のんびり言う千秋兄は随分とヘアスタイルを変えている。今の感じはチャラいとか軽いって感じが強い。
確かに着飾った天音はちょっと印象が変わった。親類の人に向けていた余所行き笑顔もアレだった。
そして、隙あらば敵意の視線を向けあうきょういっちゃんとその元婚約者。
そういっちゃんが近づくと和やかに互いを褒めて尊重してます雰囲気。
しっかり騙されているそういっちゃんに千秋兄と祥晴共々苦笑モノ。
ミホちゃんに戯れるエルザねーちゃん。シアちゃんは水槽じゃなくて、今日はずっと俺に絡みついている。寒いとこ行くなってことだよな。
つーわけで、俺が動くとジーク兄ちゃんもついてくる。
「蛇、好きなの?」って聞いたら満面の笑顔で「シアちゃんがキュートでセクシーでサイコー」と、頭悪い返事が帰ってきた。
今年は、弟も妹二人もとーさんもかーさんもいないクリスマス。
とーさんがいないクリスマスはうろなに来てから初めてだなぁって思う。終業式直向かってもきっとクリスマスには間に合わないし、人の所に招かれてるみたいなこと言ってたから会えない気配濃厚だし。
だから、行かない。
「隆維。使用済みの食器とかゴミ、回収してきて」
千秋兄に言われて動く。ふつーに祥晴も愛菜も手伝ってくれてる。
「りゅーい」
「なんだよ。よっしー」
「よっしー言うな。どっかのゲームを思い出すから」
ちょっとしんみりしちゃったから気にされたかと思う。
一角でカードバトルが勃発したり、共闘ゲームが始まったり。フリーフードで楽しみながら時間が過ぎていく。
途中できょういっちゃんはミホちゃんをつれてトンズラ。そういっちゃんは後片付けに参戦。その関係で蘇芳ねーちゃんと鈴音は今夜はお泊り。
今日は涼維が一緒じゃないはじめてのクリスマス。
家族スペースに移動してゲームしたりクリスマスプレゼントをあけたり。
「隆維! メリークリスマス!」
飛びついてきた物体に頭が真っ白になる。
「涼維?」
涼維は照れくさそうに笑ってぎゅうぎゅうしてくる。侵入経路は窓だ。黙々と沈黙のまま千秋兄が窓を閉めて、丸めたテキストで涼維の頭をはたいた。
それはもういい音がした。
「いったーい」
悲鳴をあげて、はたかれた箇所を撫でる。ただ、あまり痛くはなかったようでぎゅうってすぐしてきた。
「あのさ、あのさ」
勢い込んで言葉を探る涼維に圧される。
「明日の午前中の便で友だちんトコむかわなきゃなんだけど隆維もこない?」
「行かない」
聞くまでもなくハードスケジュールが想定されたので、一呼吸たりともおかず断る。
屈託なく笑う姿に弟の成長を感じた気がする。
兄離れはいるけどちょっとサビシイと言う複雑な心境。
他と付き合うのはイイ。お友達増やすのもイイこと!
ぎゅうぎゅうハグされながら聞く予定。組み込みすぎだから!
「……潰れるぞ」
呆れ声で言ったのは千秋兄。
「うん。そー思ったから二割くらい減らした! やっぱクリスマスは隆維と過したかったしさ」
ハグしてキス。
こういうふうに涼維といるのはやっぱりどこか落ち着く。
相互確認の儀式のようなもの。
「寂しかった?」「やっぱそばがいい」「大好き」「でも明日出立な?」「うん」「バカじゃね?」「ひでぇ!」「やっぱ好き」「うん。愛してる」
とやっていると心の狭い千秋兄が部屋いってやれって言ってきた。
「千秋兄心狭いぞ?」
「狭くてけっこう! 涼維、明日朝何時?」
「七時には空港!」
「さっさと寝ろ!」




