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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
668/823

懐かしい

2014/10/25

 真っ暗な部屋で起きた。

 はじめての場所。

 でも懐かしいにおい。

「ジョゼ」

 ジョゼは僕と同い年のおねーちゃん。

 おっきくて早くって強くってエラそう。

 いつだって一緒。

 握った毛布を強く抱き寄せた。

「ジョゼ? マーディ?」

 おねーちゃんをおかーさんを呼ぶ。

 答えが返らなくて不安になった。

「ちあき?」

 鏡があった。

 にっこり笑う僕が手を伸ばしてくる。

「……お、おまえなんか知らない!」

 そいつはしーという僕のニセモノ。

 僕の居場所をとっちゃうヤツ。

 大っ嫌い。でもジョゼは僕のそばにいる。ジョゼがいるからいいもん。

 バートにーさんもしーに夢中なんだ!

 ぷりぷりしてお庭でジョゼと遊んでいたら、バートにーさんの友だちがふらっと寄ってきた。

 すぐチューしてくるおにーちゃんでちょっとめんどくさい。

 ジョゼはふわふわの毛皮が気持ちいい。

 ジョゼはバートにーさんの友だちが嫌い。だから、うなりの響きを感じる。

「ジョゼ」

 触れた毛玉はジョゼじゃなく、濡れた鼻が押し付けられる。

「ゼリー」

 鎮にあった頃の夢。

 ジョゼはアフガンハウンド、だったかなぁ。記憶は曖昧。

 甘えてくるゼリーが可愛くて撫でちゃくる。

「最初、鎮がさ全部持ってっちゃうみたいで嫌いだったんだよなぁ」

 嫌っても、自分を特別に一番ってしてくれる鎮にほだされるのは早くて、それが鎮にとって特別でもなんでもなかったことに気づかされた時は、信じられなかった。

 それでも離れたりせずついてくるからどこまでして良くてどこからダメなのかはかろうとした。

 ちっさかったからか、理由なんて覚えてなかった。鎮はついてきて、逆らわない。いたずらをしても怒らない。怒るのはジョゼ。気に入ってそうなぬいぐるみを取り上げても決して返してとは言わずにそれを僕のだと言う僕の主張に頷いて。

 だから、返せと言わない鎮に怒った。

 わかってなかったけど、返せと言って欲しかったんだ。だけど、あいつが悪い。僕が欲しがるように僕を欲しない鎮が悪い。

 夢の中では体が動かなくて逃げられない。

「アレが記憶にある最初の挫折かなぁ?」

 分かり合えない相手として距離を置く?

 それをして忘れられるのはいや。

 友だちが増えても、鎮が特別だった。

 鎮は他の奴が困ってたら、一人でいたら寄っていく。

 でも、呼べば来たんだ。

 だから、セシリアに言われてそばにいたと言われてカッとした。

 呼べば来たのは、そばにいたのは、何をされても気にしなかったのは、言われてそばにいただけで心なんて伴ってなかったと突きつけられたから。

 誰かに言われたから、大阪の家では俺と距離をとった。

 ホントは俺のそばになんか居たいと思ってなかったということかな。

 自分から選んでは寄ってこない。じゃあ、学校での昼飯も誰かに言われて? ほら。恭君とか。

「千秋兄ぃ、朝飯しよー。まだでしょー」

「隆維?」

「うん。おはよー。えいっ」

 かけ声と共に重みがかかる。

「おはよ。えいってなぁ。重いわっ!」

 明るく笑われて重みに意識が沈む。

「って! おっきろー!」

「……今日は日曜だろう?」

 ゼリーをぎゅうっと抱き込む。部屋に鍵つけるべきか? でもやったらゼリーが不便だしなぁ。

「あーさーめーしつきあえぇええ。出遅れて一人なんだからな。一人飯嫌」

 隆維が最近妙にじゃれてくる。

 やっぱり、涼維いなくてさびしいのかなぁ。

 でも、重い。

「寝なおそうとすんなー!」

 少し、頭が重い。

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