話題を戻しましょう
「さて、退室するか耳を塞いで置物と化すか選んでください。ジークさん」
二択です。これ以上邪魔したら怒ります。
「シアちゃんは?」
「引っぺがして連れて行けるんならどうぞ。僕が苦痛を感じた時点で抵抗しますけど」
「……オブジェになってる」
お利巧ですね。自滅覚悟でシアさんに攻撃する気だったことに気がつきましたか。むしろとってほしいんですが。切実に! とりあえず、存在スルーでいきましょう。
「あくしつー。いんしつー」
ジークさんが体育座りでねちねちと言ってきます。まったく。正座してればいいんです。
「褒め言葉ありがとうございます」
くりんとジークさんは鎮さんを振り返ります。
「アレ、褒め言葉だった!?」
「んー。恭君には? 他にやったら嫌われると思うぞ?」
まぁ、お好きにどうぞって感じですよね。それより僕は、そろそろ本題に戻りたいんですけどねぇ、どこまで話しましたっけ? 一度意識飛ばしてるせいで悩ましいです。
そう、千秋さん対策で、おいておくのと放置は違うと言ったところでしたっけ。
「お昼に千秋さん苛めしてるって話の続きでしたよね?」
話題確認したらお二人とも反応早かったです。
「苛めてねーし! 一緒に飯食ってるだけだし!」
「ランチ? だいじょうぶ! あとでにやにやしてるから!」
あ。そーなんですか。千秋さんの意外……でもない真実ですね。
「まじ!?」
鎮さんも食いつきますねー。
まぁ、居心地が悪いのが早川君だけなら、ま。いいでしょう。
「おいておくのはいいんですけれど、どこかでちゃんと鎮さんが千秋さんにどう対応したいのかを考えておきましょうね?」
「どう、対応したいか?」
そーです。
「空さんは何があっても手放したくない。ですからこそ知ってほしい知られたくないで揺らぐんですよね」
大人しく頷きますね。
「ほら、ですから、空さんは鎮さんのでしょう? 空さんは鎮さんが必要で、鎮さんがいいんですよ。鎮さんも空さんがいいんでしょう?」
はい、もうひとつ頷きゲットです。
繰り返して覚えていきましょう。
わからないんなら、それでいいんです。
「洗脳してるみてぇ」
してるんです。
ジークさん余計な事を言わなくてよろしい。って、こーゆーのお嫌いなら出て行ってくださいね。置物に徹しきれないなら邪魔です。
「千秋さんを切り捨てきるなり、適切な距離を見つけるなり、相互理解を求めるなりですね。今する必要はありません。第一ね、鎮さんも千秋さんは『知らないでいてほしい』とかハブっといてわからないとか言ってちゃダメですよ。わからないのは千秋さんの方です。そこだけは言っておきます」
って、これ千秋さんの方も研究しろってフラグですか? きっちり沈むつもりでやり込みますかねぇ?
「基本位置としては守りたいんですよね。わかります。痛みを含む毒になど気がつくことなくいてほしいんですよね。僕も宗が新しい世界なんか知らず外なんか見ずに僕に飼われて生きていけばいいと真剣に考えてましたから」
「や、恭君、それなんかマズイからね?」
そうですか? どっかマズイところありましたか?
「だって、守りたいんですよね? 優先順位はあっても空さんを千秋さんを芹香さん隆維君たちも。今はね、空さんだけ大事でいいんですよ。きっと空さんで大好き。大事。を充電してるんです」
持ってしまう罪悪感を肯定で埋め尽くしてしまえばいいんです。想いなんて見えません。揺らぎます。隙間もヒビもあいまって成長し個人を作り上げます。完成された物は成長を禁じられたモノです。成長するということは壊れてそこを補修もしくは破棄して再生させることです。
それが怖くないなんて誰が言えるんでしょうか?
ヒトは、意識ある者は、誰だって他の存在の影響を受けていきます。
実に面白い。
「僕は鎮さんに出会えて良かった。有意義だと思います。正直、有意義だと思えないことって実に少ないのですが。鎮さんにはなかなか、飽きがきませんからね!」
さてさて、照れていただいていますが、ここはしっかりしておきましょう。僕にとっての今回の本題は実はここからなんですよ。
「とりあえず」
「とりあえず?」
「謝罪ひとつ入れてください。ジークさんとシアさんの件は鎮さんの管理責任ですよね?」
シアさん、反応して僕を絞めようとしないでください。
確かにジークさんは鎮さんより年上ですけどね?
鎮さんが黙って僕を見ています。
「なんで、謝るの悩むのかなぁ。なんか、裏ある?」
いやですね!
あるに決まってるじゃないですか!
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
より空ちゃんお名前お借りしました。




