あれ?
「蛇苦手?」
苦手じゃありませんが苦手になりそうですよ?
「首を絞められかけるのは苦手ですよ」
ああ。と鎮さんは笑います。満面の笑顔。
「大丈夫だよ。そーゆー絞めじゃないから」
ただ怯えてるだけ。と言いながら手を差し出すだけで、とってくれません。
トラウマになりそうなんですが。
シアさんはけっこう太くて重いんです。ついでに蛇愛好家ではないんです。僕は!
来てくれないってそこで落ち込まない!
「しーず!」
がんっとドアが開く。
どこか薄い色彩の青年。ジークさん。
「お前ら、鍵……、壁……」
ら?
鎮さんそれはいったい?
って!
絞まる。首が絞まる。気管が……!
「し、シアちゃん!?」
瞬間、一歩後退し、急接近するジークさんに反応して蛇がぎゅっと絞めてきます。本気で自力で外せませんから。
「あ」
鎮さんが声をこぼしたかと思います……。
気がつくと、天井が見えました。
「あー、ごめんねー、恭君、ちょっとドアの破壊に気がいっちゃってさー」
鎮さんがわざとらしく軽いです。少しくらい怒ってもいいですよね?
「いえ、生きてますから大丈夫です」
そう言って身体を起こすと、元凶の、いえ、コレを怯えさせたジークさんが元凶でしょうか? シアさんがまだ僕の上にいました。ついでに床の上でジークさんが正座してこっちを見ながら蛇の名を呟き続けてる状況は心臓に悪いです。
「だからさ、ジーク。まずノックな? あと、恭君の意識落としたことの謝罪な?」
あれ? 蛇に絞められてだと思うんですが? 違ったんですか? 疑問符が飛びます。
「くっ! シアちゃんに絞められて落ちるなんてうらやましい状況認めないっ!」
すみません。喜んで譲ります。鎮さん、こちら蛇フェチの変態さんですか? 視線を送ると額を抑えて苦笑されるんですが苦笑いしたいのはこっちですよ?
「今だって、シアちゃんに侍らせて!」
くぅっと泣かれても別に侍らせてるつもりはこれっぽちもないんですが? むしろギフトカードとリボンを添えて進呈しますよ?
「うん、ちょっとうらやましー」
鎮さん、あんたまでなに言ってるんですか?
「シアちゃんの前にいたサマンサちゃんは懐いてくれててさ、よく一緒に寝てたんだー。シアちゃんは俺を見かけると逃げちゃう。隆維とは仲いいみたいだけど。相性が悪いんならさびしー」
ああ、そうですか。あんたは蛇愛好家ですか。軽く絞められましたよ? まるで会話に反応しているようです。
「蛇にも個性があるんですね」
「シアちゃんはシアちゃんの個性があってね。清楚系ツンデレってかわいーと思うんだ!」
いや、ジークさん。力説されてもわかりませんから。
蛇で清楚系ツンデレってなんですか?
まぁ個性はあるよねって頷きながら鎮さんがジークさんの足をつつきます。アレはしびれてますね。
妙に押し殺した悲鳴が上がります。
そしてシアさん、どうして僕はあなたに絡まれてるのでしょうか?
ついでに僕はどのくらい落ちてたのでしょうか?
「あ。そーだ。怪我してねぇ?」
「はい?」
「さっきシアちゃんからお前引き離した時、なんか壊した感触があったからさ」
満翔にもらったお守が砕けてました。
何してくれてるんですか!?
間違いなく嫌味言われまくるじゃないですか!?
捨てとく? と鎮さんが手を出してくれますが、これを勝手に処分しても満翔は間違いなくゴネるのでひとかけらも残さず袋に入れてお持ち帰りです。
本家の人間と揉めるリスクは嬉しくありません。




