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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
660/823

十月十一日

 ファミレスで遅めのランチをしながらの雑談。

「マリカ。結婚反対?」

「当たり前でしょ。にーさんはバカで薄情で軽くってトラブルメーカーでどうしようもないけど、そこがかっこいいのよ」

 ブラコンがいた。

 ネタをふったジークが兄妹愛だと頷いている。

 ウチの妹とは違うタイプだ。でも、悪口部分は言っていても違和感ないけど。言われてたら? うん、へこむ。あとでかわいがっておこう。

「でも反対するんだ?」

「なによ」

「彼の方がアピールしているんだよ。いいの?」

 振られても振られても、懲りずにアタックを続けてどこまでか知らないけど光が見えて、その状況を邪魔する? お兄さんに嫌われたり倦厭されるの毬佳さんの方じゃあ?

「あのオバサンがにーさんの魅力を理解する希少な女だっていうわけ?」

 睨まれる。

 デザートの抹茶白玉にスプーンを突っ込んでイライラと混ぜる。

 うん。目障り。

 それに田村女史はいいヒトだから。

「毬佳さん。イラついてるのはわかるけど、食品は弄んじゃダメだよ」

 ぴたりと動きを止める。どこか無意識だったんだろう。

「おなかに入れば一緒だわ。あ。おいし」

 そう言ってきっちり食べてしまう。恥ずかしさ隠しだよね?

 そうだよね?

 ってジークは同意してんな。

「日生君はおなかすいてないの?」

「え?」

「あんまり美味しくなさそうに食べてるし、まだ半分も食べてないよね」

 確かに今日はあんまり食欲はない。

 皿の上に残った料理。

 せめてこのくらいは食べ終わらないとダメだろう。

「かき込むのも料理に失礼かもだけど、その食べ方も大概よね」

 先にケチをつけたのはこっちだけど少しイラっとする。

「まぁいいわ。そんなこと考えてたら、せっかくの美味しい料理が味気ないし」

 毬佳さんはそう言って見るとはなしにメニューを眺める。

 俺はより味を感じれなくなった料理を詰め込んでいく。

 ジークだけが気にした風もなく、追加注文するかどうかを悩んでいた。





 お昼を食べ終えて別れる。毬佳さんをジークが途中まで送ると言い出して別行動になった。狙いは彼女の最寄り駅側で評判の洋菓子店らしい。

 いってらっしゃいと見送りながらふらりと海浜公園駅からの道を歩く。

 それは彼女が最期に歩いたかもしれない道。

 中学校が近い辺り。どこで見つかったかなんて知らない。

 意味のない。本当に意味のない追跡。

 彼女はもう存在しない。

 それは真実。

 笑いがこぼれる。

 本当に僕は歪んでいるんだろう。

「君は僕の中で永遠。ずっと変わらない。僕が知るキレイでかわいいサツキさんのまま変わらない」

 彼女の見えなかった部分は知らない。

 知らなかった部分はないものだ。

 これからの人生、どれほど人として不誠実に振る舞っても彼女が知ることはない。

 お互いにきっと綺麗な状態しか見えていないんだ。

 だって、君に新しい俺を知る術はもうないから。

 きっと、これからも君だけが特別。

 きっと君を理想というベールで包んで届かないところに飾ってる自分が想像できる。

 告白もせず、妄想上の君を理想と飾る。

「俺は生まれ変わりなんか信じない。君の魂を感じられるだなんて思わない。きっと好きな間は好きだけどね。絶対も永遠も信じてないんだ」

 これは自分への暗示かなぁ。

 意味のないIFもしも

「きっと俺は……」

 言葉が出ない。浮かばない。








「またね」








『人間どもに不幸を!』

http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/

昨年(作中)の話をふまえて。

http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/43/

サツキさん、お名前お借りしました。

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