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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
657/823

応急手当て後 若葉と千秋

「ちーちゃん。他に追い詰められてる人にあった時この対応はどうかと思うよ?」

 りゅーちゃんとお友達がいなくなってから話を振る。

「わかってるよ。若ちゃん用対応だから。他ならそっと触れずに見守るよ」

 特別プランだったの。

「なんか、我慢できなくてさー。いや〜、しーちゃんがここまで落ち着いてないとは思わなかった」

「隆維や他の子の前ではやめろよな」

 ちーちゃんがため息をつきつつ、救急箱を片付ける。

「気をつける。バートもしーちゃんも怒りそうだしなぁ」

「絶対にやめろ」

 気をつけるじゃ足りなかったらしい。でも。

「無理。絶対は約束できない」

 がるがると威嚇してくるちーちゃんも様子はおかしいうちなんだ。

 それが妙にストレスになって、気がつけばついついやって、しーちゃんに呆れられつつバートに叱られる。

 バートは泣きながら叱るから、やめなきゃなーとは思うんだ。

「ちーちゃんはしーちゃんが彼女つくったの反対?」

 救急箱に手をのせてちーちゃんはぎゅっと目を瞑る。

「いきなりだね。……空ねぇなら、うん……いいさ。我慢できる」

 ああ。我慢なんだ。

「ほんと失敗したと思ってる」

 柔らかい笑顔で表情にあっていない言葉。

「失敗?」

「なんで海ねぇの条件のませたのか、その時点で妨害しなかったのかって。きっと、止める、止めれるポイントはあったはずなんだよ。でも、ちゃんと笑ってくれたらいいかなぁって思っちゃったんだよなー」

 いつの話なのか、誰なのか説明はない。

 一呼吸。服についた血を確認してる。仕方なさそうなため息。高そうな服で、普段使いしてる理由は着なきゃもったいない。だったけど。

「それに心配かけてるのはわかってたし、鬱陶しく感じてた時期でもあったんだ。勢いで自分の幸せは求めるなとか、八つ当たりしたくなかったし。してれば、良かったのかな。どう思う? 若ちゃん」

 機嫌よく言葉は続く。緑の目が楽しそうにきらめく。

「しなくて正解だよ。ちーちゃんも後悔するから」

「そうかなぁ。今充分後悔してるんだよ? 鎮はさ。僕のなのに。どーしてさ、僕じゃなくて鎮が、僕をいらないってするの? なんで? マンディやグリフといた家から出た理由だって、鎮のためで、僕はグリフ達から習うべきを習えてなくて」

 ぴたっと黙る。俯いて言葉をまた紡ぐ。

「そこにかかるのは鎮のためで。わかってるよ。全部イヤなわけじゃないんだ。ただ、なんでって思っちゃうんだよ。終わったことで過ぎ去った過去で変えれないことなのにさ」

「自分は彼女と一緒にいられないのに?」

 亡くなったと聞いたから。

「まさか。そんなトコには引っかかってないよ。だってさ、ある意味、彼女を誰かと共有はしないんだよ? 特別に好きなんだよ。だから、誰かと彼女の話をしようとは思わないけどね。会えないだけだよね? 新たな情報が蓄積されないだけだよ? たまに寂しいけど、やっぱり好きなんだよ。彼女が誰かと話してやきもきとかせずに済んでるんだよ。だってさ、もし、なんか考えてもしかたないだろう?」

 ほら。しかたないだろうとばかりに笑顔。これ以上話したくないとばかりに視線が一旦逸らされる。

「ルーカスにさ、鎮のこと許せないのかって聞かれてさ。わからないと思うと同時に当たり前だろって思った。僕のものなのに、僕以外にも同じように振舞うんだ。僕以外にも笑って手を伸ばして。キスをする。僕の特別なのに、鎮にとって僕は僕以外と同じ価値しかないんだ」

「ちーちゃん、けっこー頭沸いてるよね。今」

 いっぱいいっぱいだなぁって思う。

 にらまれたら怖いなぁ。

 だってちーちゃん、基本そーいうこと気にしないよね。らしくないよ?

 ちーちゃんはしーちゃんにそういう感情を持ってはいるけど、ちーちゃんにとってのしーちゃんはお気に入りのおもちゃの延長線上。もう少し、こだわりはあるんだろうけど、ちーちゃんにとってしーちゃんはけして対等にはなりえない。少なくとも小さい頃はそうだった。

 その辺は変わってないんだなぁと思う。

 お互いに特別なのにそう考えたりしない。

「そう見える?」

「うん。ちーちゃん、しーちゃんはちーちゃんのモノじゃないよ。人はモノじゃないよ」

「人はモノじゃないよ。でもさ。鎮は僕のだよ。若ちゃん達は僕と鎮が一緒にいるの嫌がってたよな。……なんで?」

 静かに見据えられる。

 対等に応じてほしいと言いながら、奥にあるのは対等であることを認めないであろうと思える思考回路。ちーちゃんはその矛盾に気がついていない。それともそれを踏まえての思考なのか。

 きっと、近ければ、その当たり前はもっと染みついた。

「しーちゃんはしーちゃんで、ちーちゃんはちーちゃんでいてほしいと思ったから。しーちゃんはちーちゃんいたら自主性が伸びなさそうだったからって」

 困ったような笑顔。

「やっぱり、鎮なんだ……」

 その表情を見て追い詰める言葉だったんだと気がついてそこにいたくなくなる。

 なんで、ここにいて、人を追い詰めてるんだろう?

 そんな資格も価値も立場もないのに。

 どうして?


「若ちゃん!」


 手首の痛みで我にかえる。

 ちーちゃんが手首を握ってる。白に赤く血が滲んでる。

 少し、乱れた髪。ホッとした柔らかい緑の目。

「……痛い……」

「当たり前だろ。やり直すから、おとなしく座って」




『人間どもに不幸を』

http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/

サツキさん(存在のみ)

『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さん空ちゃん、話題でお借りいたしました。

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