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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
651/823

九月二十日 恭一郎

 コールする。

 繋がる。

 切られる。

 コールする。

 繋がる。

 切られる。

 コールする。

 繋がったのを確認、途端、切られます。


 苛立ちます。


 伝言内容をメッセージで送ります。


 既読無視。


 普段ならココで折れて相手をしませんが、今日はそうもいかないでしょう。


 コールする。

 繋がっ……。

「切りましたね。あのバカ女」

「ゲームのメッセで連絡ついたから、もーいいぞー」

「きょーいっちゃん、ごめんねー。ありがとー」

 志狼さんと芹香さんの声が聞こえます。表情は見ません。ええ。見ませんとも。


 コールします。

 邪魔しましょうか。

「恭君、ムキにならない。睡眠不足じゃね? 疲れてそうだけど」

 スルリとスマホが手元から抜き取られます。

 さっき見た時間を考えて、まだ、宗からは連絡が来るような時間ではなかったはずです。

 鼻先に突きつけるように差し出されたカップに驚きます。気がつかなかったので集中力は落ちてます。修行が足りませんね。我ながら。

「ホットミルクで落ち着いてみよう!」

 鎮さんの言葉に頭痛を覚えます。

 九月です。

 まだ、暑いです。

 湯気の立つ、ホットミルクですか。

 シナモンとバニラ?

 何突っ込んであるんですか。これ?

「スパイスも入ってるし、バニラアイスも突っ込んだから、甘さも適度! さぁ、ぐぐっと!」

 適度というか、激甘ではないでしょうか?

 鎮さんがにこやかに差し出してくるのを受け取って、仕方ないので飲み始めたんですよね。確か。

 熱いのでちびちびと。


「あ。起きた。喉渇いてんじゃね?」


 隆維さんの声です。

 起きた?

 目を開けて、息が止まるかと思いました。

 視界に入ってきたのは蛇の頭部。

 しかも、それなりにサイズがあります。

 ジッと観察されている心境です。

 ここに蛇がいるのは知っていましたが、対応に困ります。しかも、寝起きに。……どうして、僕は今、寝起きなんですか?

「シアちゃんっていうんだよー。かわいーでしょ」

 隆維さんが笑顔でグラスを差し出してくれます。

 かわいいかどうかはわかりませんが一瞬、悲鳴あげかけました。声でなかっただけです。というか、放し飼いやめましょう。

 するりと蛇は僕の上から隆維さんへと移動します。隆維さんは手馴れた様子で好きなように絡ませています。前にいた子は鎮さんにばかり懐いていたんですか。そーですか。興味ありません。

 少し、塩分を感じるフルーツジュース。妙にほっとするのは水分不足と、思ったより寝汗でもかいていたんでしょう。

 確かに少々不眠ぎみでした。ですがいきなり落ちるのは釈然としません。

 しかも、夕方に見えます。

「隆維さん、僕は何時間寝てたんでしょうか?」

 スマホは少し離れたテーブルに置かれています。

 宗からの連絡……。

「ん~、気にしなくていいんじゃね? そういっちゃんにはしろーちゃんがアドバイスしてたし。夜に打ち合わせして、早朝弁当詰めてって、寝てなかったんっしょ?」

 志狼さんは卒業生ですからわかってるでしょうし、公志郎はつけてありますしね。問題はないでしょう……たぶん。

「あのミルクは?」

「半分、アルコール~」

 あははーと隆維さんは気楽に笑ってます。

「何してくれるんですか!?」

 急性アルコール中毒で運ばれて退学とかシャレになりませんからね!?

「えー。睡眠導入剤とかは手に入り難いしさー。無難に」

「無難じゃありません!」

 ひとしきり危険性について説明を。主に進学面で不利になることについて。

「大丈夫。病院に運ばれることはないからバレナイ」

 のんびりした口調で軽い、実に軽い謝罪とドリンクのおかわりを受け取ります。

「鎮さんは?」

「ん~。図書館行くって言ってた。空ねぇとデートかなぁ?」

 そーですか。

 状態は揺らいで不安定に見えたので少々、気になるんですけどね。

「人の恋愛、気を配ってる場合なんですか?」

 向こうの親族の方と縁談が出たと聞いてます。

「美味しいんだけど、鈴音の方がいいかな」

 表面に騙されると痛い目見ますよ? アレはいわゆる束縛系のヤンデレですよ?

「可愛いし」

「かわいいですか」

「いっしょーけんめい、俺の求める理想像にあわせようとしてくれるでしょ? 可愛いと思うよ?」

 隆維さん、わかって言ってます?

「鈴音さんとの仲を認めるメリットってなんです?」

「さぁ? 俺は家族が平和で幸せだといいなぁ。そこにはもちろん、鎮兄も含むから、そういっちゃんは望むトコじゃね?」

 とりあえず、協力路線ですか。

「めんどくさいですねぇ」



『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

空ちゃん、お名前ちらり

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