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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
635/823

九月二十日 朝 千秋

「え? チアキ。その後、それ、そのことにははなしあわなかったって、こと?」

 ルーカスが信じられないって表情で俺を見てくる。ジークもちょっと『あらぁ』と言いそうな微苦笑。



 ジークはまだ明るくなる前から押しかけてきて、少しだけルーカスのことを教えてくれた。

 その時に芹香はベッドから抜けて、着替えてから、ジュースを持ってきてくれた。そのあとは自室に戻ったようだった。



 セシリアママ。

 マンディや研究室系の派閥が基本的にセシリアママの意思系に従っている派閥であり、科学技術や医術等の推進派。治療法を見つける。原因究明に熱心な派閥がフローリア達の方で現在の多数派らしい。

 ジークやルーカスの父親もこちらの所属だ。

 ただ、ルーカスの母親と祖母は違う派閥に所属していたらしい。祖母の亡くなったという二年前まで、父親方にはほとんど接触がなかったとか。

 どういった派閥なのかという説明を求めたら、ジークは口ごもって「知らない」と返してきた。

 ただ、幾つか細かい派閥はあるんだと教えてはくれた。直接関わらない以上知らない方がいいことも多いからと笑うジークの処世術らしい。

 教えてくれたのが奇跡?

「そーいうことはレックスやエルザに任せてればいいんだしさ」

 人任せらしい。ベッドの上にはルーカスが持ってきた資料が広げられている。

 資料に関しては十秒ぐらい見た後、ジークは持参のルービックキューブを弄りはじめながらルーカスのことを教えてくれたんだ。

 とりあえず、違う派閥の教育を受けているはずだって。

 で、当のルーカスがこの部屋に混じったのは朝食時間頃、最初はたわいない会話をしていたと思う。

 話題があの頃のことになって、近づいてきている影響もあったのかもしれない。少し、心が痛む。

 鎮をこの手で抑え込んだ感触が蘇る。無抵抗だったことが苛立ちを募らせた。思い出して手を見てたら、「どうした?」とジークに振られて、ポロっとこぼれた。あの日のこと。

 したことをいけないことかと聞かれたら「なんで?」と思えて、そこから、ルーカスの言葉の選び方が変わっていったように思えた。だって、あの日のことで後悔していることなんかあるだろうか?

 ないんだ。感情は抑えれなかったけど、それが後悔するほどかと言えば違うんだと思う。必要だったんだなぁって。

 ルーカスの特に意図のなさげな問いかけは答えるのが自然に思えて。


「鎮だし」


 自然とこの言葉が落ちた。

 話し合うって、何を?

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