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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
631/823

九月十九日 夜 旧水族館 8

「馬鹿じゃないの」

 芹香がポツンと呟く。仕方がないとは思うけど。

「酷いな」

「鎮兄、追い詰めないで」

 そこが芹香が今一番に気にしているポイント。そこまで気遣う必要があるのかと少し軽く見てたのは確かだ。

「そのつもりはなかったんだけどな。楽しい?」

「うん。この剣士のおにーさん優しい。お店とかイベント場所とか教えてくれるし」

 別の約束があるからと挨拶している剣士のアバター。でも中の人は女性だとか。

「えっと、ネナベって奴?」

「そーなの? カッコいいから別に良い。千秋兄もやる?」

 芹香はその辺りの興味は無さげ。まぁ、ネット上の性別なんかわかってなくてもいいものかもしれない。でも、好意を囁くなら中身は女の子がいいなぁとか思う。外見も大事だけどな。

「え?」

 不意に振られて驚く。ネトゲをやるなんて考えたこともなかったから。

「えっとね、グラフィックは積んでないと処理落ちしやすいから必要な環境は良く確認なんだって」

「ふーん」

「メモリとハードも大きい方がいいんだって」

「わかって言ってる?」

「ううん。とりあえず、ある程度のマシンスペックが必要なんだって事らしいよ。止めたほうがよかったかなぁ」

「なにを?」

 手を離したマウスを動かす。ゲーム?

「隆維が付いてったでしょ?」

 ああ、そっちね。

「あー。そうだな。あいつ時々キツイから」

 色々小煩い。自分の傍若無人振り棚上げで。

「そーゆーの基本的に言うの千秋兄にだけだけどさ、今回は鎮兄にも言いそうかな。……困る」

 なんだと? 俺だけ? 鎮にはそんなに言ってないのか?

 お。町並み凝ってるなぁ。門発見。こっから外かな?

「俺だけかよ。差別を感じる。芹香?」

「今、鎮兄、バランスあやういから」

 確かに空ねぇへの依存ぷりとか、過剰反応のしやすさとか、反応場所が最近おかしいとは思うけど。

「っう。悪かったよ。そんなふうに揺らぐとは思わなかったんだよ。ただ、届かないのがもどかしくてさ」

 つい語ってるうちに熱が入ったのは確かだけどさ。

「きっと、私も扱いをミスったの。空ねぇがいてくれたから、まだ保ててるの。メールしとけば良かった。隆維は知らないもの。怒ってたし、限界値が変わってるコトを知らないから」

 何があったのかは情報は貰えてない。だけど、ミツルもエルザも鎮の様子には神経質なほど気を配っている節が見える。

 おぉ。森の中に滝かぁ。凝ってるなぁ。

 隆維に知らせなかったのは家族団らんを邪魔しない為だから悪意は存在しない。

「距離感隆維は気がつくの早いだろ?」

「……千秋兄が鎮兄を一歩追い詰めた後じゃなきゃね! あ! 目を離した隙にどこに連れ出してるのよ!」

「どんなフィールドが広がってるのかと思ってさ」

「まちはどっち!?」

「さぁ?」

「千秋兄最悪ー。死なせずにまちに連れ帰ってよね!」


「えー。面倒くさい」


「ばかーーー」

『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

空ちゃん(話題でお名前)お借り中です

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