るぅるぅ墜落紀行・偶発編☆るぅるぅの賠償金
「るぅるぅはるぅるぅなのだ。きれいにしてくれてありがとうなのだ」
腹ばいに寝そべった状態だがそのまま頭を下げておく。
「うむ。困ったときはお互い様だ」
「赤、花高面?」
「天狗仮面だ。食べるといいぞ?」
差し出される皿。
「るぅるぅ用にくれるのか?」
「うむ」
るぅるぅ専用にお皿にのった食事。
飛行訓練を始めてからはじめての『まとも』な食事にるぅるぅは感動なのだーー。
「ありがとーなのだぁあ」
がばりと身を起こし、マイフォークとマイナイフを取り出す。
「む。どこから?」
「肋骨に専用の引っ掛けがあるのだ!」
かぱりと胸元の装甲燐を引き開けて見せる。
心臓の脈動が丸わかりになるのが心持ち照れくさい。
ちなみに専用カップもぶら下がってる。
ぱこっと閉じると皿に向き合う。
「いただきます」
西の山に強い力を持ったモノがいると聞いたので上昇して町の力の配分を調べてみる。
力の強い者が多く潜み棲んでいるのがわかった。
ゆえに力の流れは多重にずれている。
だが、
「基本は滑らかでおおらかなのだ」
たくさんの長虫、いや、電車が町を練っている。
わかったことーーーーー!!
力の放出が高い割りに吸収がしにくい超非効率状態であることなのだーーー。
高く飛びすぎたのだーーー
ぼて
きゅう
「ん?」
気がつくとお膝の上だった。
夕暮れが綺麗である。
「気がついたかい? 怪我はないようだけど」
そこは河川敷だった。
川が涼やかな音と風を届けてくれる。
「大丈夫なのだー。おひざに載せてくれてありがとうなのだ」
彼は目を見開いてるぅるぅを見下ろす。
返事が返るとは思ってなかったらしい。
ズボンの裾が濡れているのに気がつく。
ズボンとるぅるぅの間にはしっとりとした布。
そして川。
「るぅるぅを川から引き上げてくれたのか?」
彼は苦笑気味に笑ってるぅるぅを撫でてくれる。
「ありがとうなのだ」
「元気でよかった」
そう言って撫でてくれる。
「おーさま?」
「は?!」
「この人の集落をまとめてる長だろう?」
困ったように笑いながら「そうなるのか? いや、王様って」とぼやく青年。
「るぅるぅは今日、きっといっぱいこの国に面倒を起こしたのだ。だから、長ならこれを受け取って欲しいのだ」
「いや、国じゃなくて町」
かぱりと装甲燐を開いて中を漁る。
引っ張り出したのは小さな袋。
るぅるぅのプチコレクションが入っている。
簡単にカットされた鉱石が転がり出てくる。
ちゃんと魔石とかが入っていないことを確認。
「るぅるぅ、この世界のお金持ってないから。でも命の恩人に何も返さないのは許されないから。受け取って欲しいのだ」
るぅるぅが載っていたしっとりした布に鉱石を一掴み載せる。
「るぅるぅ、このくらいしか出来ないのだ」
あと出来るとしたら火ぃ吹いてズボンの乾燥を速めるくらい?
危険だ。
やめておくのだ。
「るぅるぅ、がんばって帰るのだ」
ふわりと体を浮かせる。
夜が近づいてきて力の吸収もしやすくなってきている。
だいじょうぶ。
さぁ、上昇……
「町長ー。西ってどっちなのだー?」
<しかたがないな>
不満そうに人狼がぼやく。
協力はしてくれるようなのでるぅるぅに不満はない。
「礼はるぅるぅの爪とか、霊薬とかでいいかー?」
るぅるぅの爪は漆黒の竜爪だ。
異世界であろうと利用法を知るものならばそこそこ使える。
霊薬はいわゆるエリクサー。るぅるぅからしたら健康促進の程よい酩酊感をもたらす酒だ。
あとは魔石込みの鉱石を差し出す。
重要な協力者である老樹にも頭を下げる。
気にしなくて良いとばかりにさわりと木の葉のざわめきが聞こえる。
「るぅるぅ、いっぱいこの世界の人に会ったのだ。みんな親切だったのだ」
まぁちょっと、追い回されたり、遭遇するとやばい予感バシバシな少女に急接近もしたが。
おおむね平和だった。
「そして思ったのだ」
<ん?>
「ここってもしかして『らのべ』とやらが大量にあるとかって言う世界じゃないんだろうかと!」
<知らんな>
「そっかー。ちがうのかー。読んでみたかったのだー。50年生きてきたけど本物にはまだお目にかかってないのだー」
<本物?>
「そう。『真のらのべ』薄い『ドージン』じゃないやつらしいのだー」
<さっさと帰れ>
天狗仮面
町長
人狼エインセル
お借りしております
簡単に内臓を見せるるぅるぅ、普通の人はひくと思われます。




