九月十九日 夜 旧水族館 7
そういっちゃんにキャラを作るのを手伝ってもらいつつ千秋兄と隆維の会話を聞くともなく聞いている。
隆維はうまく回ることを望む。家族と言うカタチがバランスが取れてることを望む。人に失敗をしてもいいと言うけれど、自分にそれを許してるかどうかは疑問かなと思う。
男女の役割についての意識はかなり分かれている方。『女性らしく』『男性らしく』と言うことに意外なほど拘るところがある。その辺は千秋兄たちの方が軽い。ある程度、ウチの兄は大きい方も小さい方もふぇみにすと? だと思うけど、それってある意味性差別? 性区別?
うん。その辺はよくわからないけど。女の子なんだから料理できなきゃとか、女の子だから勉強や運動がイマイチでもいいとかは言ってこないかな。
でも時々、『女の子なんだからかわいかっこいいかっこしたら?』とかは言ってくる。
今日、わかったけど、夜の外出や、デートに関しては意外とめんどくさい兄なのかもしれないよね、隆維って。
「ウチの妹と付き合おうって言うのかって、ごねそうだよね」
そういっちゃんがそう言いつつ画面を見せてくれる。
髪型と瞳の種類、そういうのを決める画面だった。
マウスを使って選びながら、確かに言いそうだなと思って笑う。ミアとノアはきっと大変。あの子達はのんびりしてるとこがあるから気がつかないかも?
途中スマホを使って誰かと連絡をとったそういっちゃん。
時々言葉をもらいながらチュートリアルを進める。
「職業決めるの?」
「そう、武力で闘う? 魔法? どっちが芹香ちゃんの好み?」
「んー。魔法使いがいい!」
そういっちゃんが指すほうをクリック。
まだ選択肢が出てくる。
「回復系? 攻撃系? 補助系?」
「ここはやっぱり攻撃系! 大量滅殺」
「あぶないね。了解。黒魔術をえらんで」
指示に従って帽子と杖のマークをクリック。三角帽がかわいい。
その後は戦闘法のチュートリアル。
そして初心者用のはじまりのまち。ログアウト方法やショップ。チャットのやり方を簡単に説明してくれる。
「LVが十になるまでは職業の選択はまだできるからね」
「そういっちゃん、なんか声かけられた!」
「チャットの仕方説明したよね? 挨拶を返して。文字打つのに自信がなかったらそこのエモーションボタンを」
エモーションマークのにっこり笑ったマークをクリック。
話しかけてきてくれた剣を持ったお兄さんも同じエモーションマーク。
「お返事くれたー」
「ゆっくりでいいからお返事打とう?」
「うん!」
ゆっくりした会話。剣士のおにーさんはゆっくり待ってくれる。優しい会話。
ふとそういっちゃんがスマホを操っている。
「そういっちゃん?」
「なに?」
「このキャラそういっちゃんだったり?」
指さしたら笑われた。
「知り合いだけど、このゲームはスマホでは起動しないから。ゲーム内での補助を頼んできてもらったのは確かだけど」
そういっちゃんのお友達だった。
鎮兄が複雑心境そうだなーと思う。
「ネットのお友達?」
「ん。フィアンセ。物理攻撃プレイが好きでね。僕が補助回復系の魔法使いだからバランスがいいんだ」
「えっと、ゲーム内?」
そういうゲームもあるよね。ゲームの中でウェディング!
「ん。ゲームリアル共にバランスのいい関係かな」
「そういっちゃんのキャラって?」
「女の子アバターだよ? ファッションがかわいいのが多いから。今度時間あわせてパーティ組もうね。トレード依頼きてるからはいをクリックして」
「うん」
あれ?
何かアイテムとお金が表示される。
「はい。をクリック」
「いいの?」
「レベル上がってゲームに慣れてきたらいつか今の芹香ちゃんみたいな初心者さんに同じようにサポートしてあげればいいから。今はありがとうございますでいいよ。暁智さんもこれプレイしてるはずだから、見かけたらたかってもいいかもね」
おじさんもやってるんだ。
一旦、中断。ログアウトとログインをもっかい教えてもらう。
あと、ネットマナーサイト。
個人情報管理とか気をつけようねと注意を受ける。
そのぐらい、だいじょうぶだわ!
「ほら隆維、晩御飯」
鎮兄が料理ののったトレーを持って入ってきた。
少しだけなと私にもお皿を差し出してきた。みんなで食べなきゃね!
「鎮兄は一応家事一般出来るから、そこはセールスポイントよね!」
ね!
空ねぇ!
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
空ちゃん、お名前お借りしました。
と言うかこの日付中借りっぱですね。




