九月十九日 夜 旧水族館 5
ぱたりとかち合う。
なんでこんなタイミングが合うのかがわからない。
きゅっと空の手を握りこむ。
視界の端で微妙に気まずそうにしてるそういっちゃんと苦笑を浮かべる恭君。
飛び出したのは、俺で、求められてることがわからなくなったのも俺。
意見を求めてるわけじゃなく、自分が進みたい道を選んでいくために千秋は言葉にしたかっただけ。
言いながら、俺が先をどう見てるか知りたかっただけ。ただ、それだけ。
俺が、わかる必要のないこと。
千秋には俺が要らない。
それを突きつける。
きっと、千秋は俺がそれを受けて、楽になれると考えてる気がする。
好きに動いていい。自由でいて欲しい。否定しろ。受け入れちゃダメ。
千秋が俺に望むことが理解できない。
俺はただ、ひたすらダメな答えを選び出している。
そう思うと軽くなった気がしてた心が重い。
だって、何を言ってもどう、返しても千秋は満足してくれない。
「ついさ、うん。怒ったわけじゃなくて、しずにどうしたいかを聞いて欲しかっただけなんだ。怒らせたかったわけでもないから」
「千秋は俺が進路を決めれてないのを心配してくれただけだよな」
ココで笑って、止めるべきなんだ。なかった事にしておくのが正しい。
空の手を離して、千秋と和解。きっとうまく回ると思うんだ。
ほら、千秋も少しホッとしてる。
「俺じゃ、正しいことは選べないからな」
わかっていたはずなのに、するっと落ちた出るべきでない言葉に千秋が「そうじゃない」と否定する。
恭君と話していて随分と落ち着いたと思ってた。
「違うの?」
違うんだよな?
苛立ちを示すようにまとまりきれない言葉を探すように千秋の視線と指先が動く。まるで、捕まえられない幻覚をつかもうとしているようにも見えてくる。
「そういう事を言いたいわけじゃなくて!」
「わかんねーよ」
千秋の言いたい事も、望むことも全部。だから、きっと必死に選んでる言葉を拒絶する。
だって、認めてほしくないんだろう?
いつだって違うんだろう?
「なんで、そーいう解釈になるんだよ!? 俺だってわかんないよ!」
「だって、俺が間違ってるんだろう?」
ほら、簡単な答えだよな?
「そんなこと、言ってないだろう!?」
「悪い。俺がちゃんと理解出来ないから怒らせるんだよな」
ほら、俺が悪い。視界が揺れる。
だって千秋は悪くなくて、うまくいかないんなら俺が悪いだろう?
「なんで、そうじゃないって言ってんのに届かねぇんだよ!」
服を掴まれて揺すられる。空は恭君とそういっちゃんが少し離していた。
怪我するかもしれないのはダメだしなぁ。
あ。恭君気に入らなさそう。
「なんで、全部、受け入れんだよ。結局、そばにいるのが、俺じゃなくても、しずには変わんないことなんだろ!?」
「ちあき?」
何言って……?
「言われたら、誰でもいいんだろ!?」
「ごめん」
ふっと見覚えのある影が腕を振り上げた。
ぱん!!
背後で倒れる音と空の声。
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
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空ちゃんをちらりお借りいたしております。




