九月十九日 夜 旧水族館 2
鎮兄と千秋兄が軽く揉めてる。
内容までは届いてこない。周りは止めようか、発散させとこうか悩んでる感じ。空ねぇ困ってんじゃん。
つーか、何こんな時間に連れ出してんだよ。
イラっとするよな。
そんな中、紙鉄砲を折りあげる。
軽い破裂音に沈黙と注目。
驚かそうと連絡せずに帰ったら。わかちゃん(多分)がリスカしてた。
言い訳は、「いやぁ、つい」ついでやんな。
慌てた感じで止血用の布と拭き掃除用の雑巾を持ってきた碧と知らないにーちゃん。
鎮兄と千秋兄は?
なんで、いねーの?
「二人はケンカして外出中ネ」
ミラが教えてくれる。軽くほっぺにチューでただいまを。同時にぐるぐるすべき事を考えていく。ちびっこは流血現場なんか見なくていーの。ミラの視界からわかちゃんを遮る。
「碧ちゃん、芹香連れてアイス買ってきて。帰った早々自分で買いに行けとか言わないよね?」
碧ちゃんは不思議そうにしながらも頷く。わかちゃんを気にしてるけどこっちはなんとかすると頷いておく。
「私も行くわ。文房具買い足したいから」
女の子の見るものじゃないと思うから隠しておきたいのになー。こっち来ちゃうのも仕方ない?
「千鶴。っと、ただいま。でさ、芹香はこっちを通らないように気をつけてやってー」
「見せるの良くないわよね」と当たり前のように頷く千鶴を確認し、見なれないにーちゃんに視線を合わせる。
「あんた誰?」
「ジークって言うんだー。シーとチアキとはおさななじみねー」
ニカっと笑いつつも止血のための行動には出ている。一応、聞いた名前かもしれない。どっちにしろ、わかちゃん以上に部外者だ。
「居候? じゃあ床掃除よろしく。ミラ、鎮兄とかに連絡は?」
アイス買いについてかなかったの?
ま、情報源はいるかなぁ。それにしてもにーちゃん達年長者、だろ。自覚うっすい!
「ならしたらお部屋で鳴ったよー」
「えー? 千秋、兄にしても、……しかたないか。わかにーちゃん意識あるよなー?」
意識途中で手放してないよな?
内緒で驚かすつもりが驚かされて、困惑しないとは言わない。
兄達が『そこ』を意識しない状況って、何があったんだと思う。
片方だけならわかる。両方とも?
「りゅーちゃん?」
意識はある。手首なんて切ってもそう簡単には死ねない。深さ的に死ぬ気があったとも思えない。アルコール臭もしないし。
「きつく縛るからね!」
大雑把に縛って、自分のマンションに戻ったゴドじぃを呼び出す。ついでに一応碧ちゃんや芹香を買い物に出したから警護の手配も頼んでおく。折り返しメールで、俺を送った人がそれについたと報告メール。よし。
「ジーク、大丈夫?」
顔出したのは確か……エルザさん。
サッと状況確認すると、ジークにーちゃんにあらためて後片付けを言いつけて、俺の応急手当てより多分に手馴れた応急手当てを施す。
「おかえりなさい。シャワー、浴びて着替えてきたら?」
じっと見つめていると笑われる。確かに思ったより血で汚れた。
「チアキは多分、もうじき帰ってくるわよ?」
「たぶん……?」
「人がついてるから」
……人がついてないと不安な精神状態なの?
気にいらない。
「りゅーいくんよね? りょーいくんは?」
一緒じゃないのと聞かれても答える理由がない。俺的には知らない相手。
「つい。とは言え、くらくらするねぇ」
わかちゃんはふざけんな。
そして、シャワーで血を洗い流して冷蔵庫を確認。
……つまめるの少ない。
晩ごはんも頼んどけばよかったかな?
そんなことを思ってたらお知らせランプが点滅。防犯機能だけどね。
兄ちゃん達か芹香が帰ってきたんだと思って、驚かそうと出たら、鎮兄と千秋兄のちょっとした口論だった。
基本、千秋兄の一方攻撃?
なんで、俺が驚いてばっかりなのさ!
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
より空ちゃんお借りいたしました。




