九月十九日 夜 鎮2
平日の夜です。金曜日ですけどね。
ちょっと早く学校から帰れたので宗の顔を見て和んでそろそろ帰ろうかと言うところでしたよ。
ええ、鎮さんが訪ねてこられたのは。
下手に会話に噛ませるとこんがらがりそうなので、宗には空さんを呼びに行ってもらいます。ちゃんと鎮さんのことだからっ て先にメールするように言い含めました。
ちょっと思いつめた感じの鎮さんにお茶を淹れます。苦めにしましょう。予定崩されましたし。
「で、どーしました?」
こないだの電話ではひたすら空さんの惚気ノンストップ二時間とか、すでに定番BGMですが?
料金プランには影響のないSNSの無料通話ですよねぇ?
まぁ空さんのプライベートもいるでしょと促したのは僕なのでそこに文句をつける気はありませんが。
「千秋が俺のことやっぱりダメっておもってた」
そーですか。
そちらですか。そういえば千秋さんもほどほどに距離をとれと小言を言うタイプでしたね。
「スマホは?」
「置いてきた」
そーですか。
そのかわりにキリンさんのぬいぐるみですか。可愛らしいですね。
つまり、双方空回りですか。
そーですか。
「千秋さんがどーしたんですとお尋ねする前に、鎮さんはその会話をどう思ってるんですか?」
「千秋は自分のしたいことの初心表明だって言ってた」
「ぁー。半分は自分に言いきかせて、鎮さんにはその証人ってことですね」
聞いたことと答えが微妙にズレてますよー。
そこは後でいいんですよー。
「俺がわかんないって」
そーでしょうね。鎮さんは無自覚で誰も信用してませんからね。
でも、ここでも説明が不足してますよー。鎮さん『が』千秋さんをですか? それとも鎮さんのことを千秋さん『が』ですか?
千秋さんは信用していない風を装いつつ、信用しやすいんですよね。だから、二人は合わないんですよ。
これ、対話長くなる予感なんですが?
明日早めに学校つかなきゃいけないんですけど?
わかりました。後で公にメールして、対話終了後せっちゃんに送ってもらいます。
お茶のおかわりを入れるついでに公にメールして、カフェオレとハロウィンをイメージしたチョコの詰め合わせの箱をあけましょう。
それにしても気がついてるのか、いないのか、千秋さんも配慮が足りませんねぇ。
うまく気がついていないから配慮しようもないのか仕方がわからないのか、困ったものです。
鎮さんとの信頼、信用関係はまだまだ築いていないんですよね。まだ壊れやすい緩い信頼関係で、踏み込み感覚も情報も不足してるんですよねぇ。
僕の方も今忙しいし。
「そこまで体力ないんですよね。ウチの学祭と体育祭一週間離れてないですし、そのあと修学旅行もありますしね。洒落なく忙しいんですよ?」
上目遣いすんな。鎮さんの方が年上でしょうが。
「それでもですね、僕から言い出してるんですよ? 力及ばないところも片手落ちもあります。そうですね、全力でかまってくれ。と言われたら、それでもいいですよ? 学校での人付き合い人脈作りの割合を減らすことなら出来ますから」
どうしますと見返すと困ったように視線はそらされる。
「それってさぁ、俺、迷惑じゃね?」
……。
どうしますかね。
コレ。
まずは正直にぶった切ってみましょう。
ええ。ぶった切ってから考えましょう。
吸って、吐いて、吸って。
キチンと見据えて。
「もちろん、迷惑です」
瞳には傷ついて『納得』した色。
「鎮さんが嫌なら嫌ですっぱり断って下さい。無理強いをするつもりはないですよ」
まったく。
このぐらいのセリフで困惑しない。
「嫌じゃ、ないし」
そーですか。
それなら、いーんですよ。
「僕は僕の楽しみだって言ってますから。鎮さんがそこを気にする必要はありません。と言うか、気にされることが迷惑です。わかります?」
「えー。だってさぁ」
「人の思考は予測出来ても確定なんかできないんですよ?」
鎮さんが頷くのを確認。よし。
「信用しろも信頼しろも言いません。ただ、逃げるなら、受け入れられないならはっきり言って下さい。僕も鎮さんに構ってられなくなったら、そう言いますから。事実、僕にだって僕の都合がありますからね」
その際、方向性次第で空さん、大変かも?
信頼信用依存情報の低い状況で意識誘導って難しいんだよね。
当事者の一人空さんも巻き込もうと思います。
もう片方の千秋さんはしばし、放置と言うか接近すんな?
そっちのケアできるほど余裕は僕にはない。
「そー言えば、鎮さん」
「んー?」
ちょっとは落ち着いたのかな?
「空さんにいーかげん言えたんですか? あの件」
「んー」
どっち、だよ!?
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
より空ちゃんお名前のみお借りいたしました。




