九月十九日 夜 千秋3
「空さん」
宗君が呼びかければ急いで駆けてくる。
「し、鎮君は?」
急いで来たのがわかる息切れ。それでも鎮への心配が先立ってる様子の空ねぇ。
「恭兄さんが話を聞いてます。でも、空さんいた方が良いって。お時間大丈夫ですか?」
宗君から与えられた情報にこくこくと頷く空ねぇ。宗君が不意にこちらを向く。
「あ。千秋先輩はダメですからね?」
息を吐く。
「さすがにわかってるって。空ねぇ、ごめんね。アイツのこと追い詰めるような気はなかったんだけど、なんか、上手くいかなくて」
モヤっとしたものはある。
どこまで話して大丈夫なのかわからない分、上手くまとまらない。
宗君の住んでるマンションまで同行する。
「チーアーキー」
くんくんとルーカスが背中を引っ張る。
服が伸びると睨めば機嫌よく笑われる。
「つたえるべきはー、おにーちゃんをよろしくでしょー」
なんかムカつくから殴っていい?
こちらを気にすることなく全開笑顔で「シズメをヨロシクー」って、
「なんで、ルーカスが言うんだよっ」
「未来のオネーサンかもしれないからー」
ルーカスはへらりと笑う。
勢いに驚きつつ空ねぇも小さく笑う。ついでにこっち見た?
「ルーカスです。オネーサン」
名乗りつつ悪戯っ子のように笑う。苛つく。
「オネーサンがシズメとうまくいって、ボクがセリに選ばれたら未来のオネーサンかなぁと」
ろり?
「ちなみに候補の中でボクイチバン年下だからね。チアキ」
ぇえー。
どーしよう。不満しかないんだけど。
宗君のマンションの前。
上にはあがらない。エレベーターホールで空ねぇを少しだけ呼び止める。
「空ねぇ、……鎮のこと、お願い」
上手くまとめられない。辛うじて言えたのはそれだけ。
「うん」
空ねぇが消えたエレベーターを見送りつつ息を吐く。
そして、横でこちらをうかがうルーカスに俺が言うべきことは一つ。
「ロリコン」
「そー言われるのはわかってたし、今回、セリには会う気ないんだよ?」
なんで?
「だって、年齢差の大きいうちに姿を見ちゃうといもーととしか見れなくなることもあるでしょー」
適齢期まで会いたくないなーというルーカスはなぜか空ねぇと一緒に部屋に戻らなかった宗君に笑う。
「ソーイチロ、チアキの好きになったオンナノコってどんなかんじのこだったのー?」
それはキラキラの好奇心。
「あんまり、知らないんですけどね」
宗君!?
何を話すつもりだ!?
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
より空ちゃんお借りいたしました。




