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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
612/823

九月十九日 夜 千秋

「なにやってるのよ」

 初心表明しただけであんな反応は予想してなかった。

 鎮を追い詰める気なんかなかったんだ。

 ただ、決めた事を知って欲しかっただけで。聞いて欲しかっただけで。

「エルザ」

「ジークが慌ててたわよ? マサトはだいたいの行き先に見当がついてはいたみたいだけどね」

「そっか。だいじょうぶ、なのかな?」

 気にはなる。どうしていいのかわからない。追いかければ、距離が開きそうで、向けるべき言葉も浮かばない。

「さぁ。どうして私が鎮を迎えに来たかったと思ってるの?」

 どうして?

 エルザが呆れたように息を吐く。

「外との認識齟齬に耐えれないケースや適応できないケースを考慮しての判断よ?」

「でも、鎮は、ちゃんと……」

「ちゃんと? 今ばっちり適応できずに困惑真っ只中ね。対応できる以上のストレスでもあったんじゃないの?」

 わかってる。エルザは鎮が大事だ。庇うべき守るべきと認識してる。だから攻撃的になる。

「話すだけで、何かを要求するわけでもなかったから、だいじょうぶ、だと、思ったんだよ」

 エルザが苦笑する。

「今だけじゃないわよ。こちら側の生活にうまく認識を合わせられなければ、ストレスなの」

「そのぐらいのストレスは誰だって」

 ストレスと無縁に生きていける人間なんかいない。少し、いいわけだ。

「チアキ」

「ぇ?」

「当たり前が当たり前じゃなくなるストレスは、本来、少なくあるべきだわ。引っ越しはまずストレス。幼少期に繰り返すのは良くないとされてるわね。ねぇ、フローリアからなにか見せてもらったんでしょ?」

 なんとか見せてもらえた資料。産まれた後の数年。俺と鎮の周囲を囲む環境は大きく違った。でも、覚えていないような幼少期だ。そこからズレはあっても近い環境になっていった。

「ねぇ、シーを拒絶したのはなぜ?」

 拒絶?

「エルザ。チアキをいじめちゃダメだよ」

「あら。ルーカスはチアキびいき?」

「ひいきもなにもチアキのコトもシーのコトも知ってるわけじゃないしね。チアキは手の届くところで頑張ってると思うよ?」

 ルーカスが庇ってくれる言葉はエルザの言葉より刺さるところがある。息が詰まりそうだった。

「拒絶したつもりはないよ」

「受け入れられなかっただけ?」

「そうじゃなくて……」

 特別が良かったんだと思う。他と一緒じゃなくて、特別。

 そりゃ、最初は自分が独占してた場所に割り込んで来たのが嫌だったんだと思う。マンディもおなかにゲイルがいるのがわかった頃だったし。

「なんだか、難しいんだよ」

 不満なら自分で動くしか、主張するしかないじゃないか。

 自分で変えれるように理解できないものはわかるヒントをもらえるように動かなければ何も変わらない。動き方がひとつじゃないのはわかってる。

「チアキ」

 ルーカスと視線があう。

「シズメとチアキは別の思考を持つ別のそんざいだよね?」

「そんなことわかってる」

 困ったような表情がイラつく。

「じゃあ、チアキとはわりきれる場所も引きずってしまう場所もちがうのはわかるよね?」

 言い聞かす口調が苛立たしい。

「千秋先輩、鎮先輩、今うちに来てますから心配ないですよ。もしかして空さんとかに千秋先輩からメール入れました?」

 不意打ちの宗くんの声。

 振り返るとにこやかによって来て聞いてきた。

「千秋先輩?」

「空ねぇにメールは送ってないよ」

 宗くんはきれいにエルザとルーカスを無視する。

「そうですか。ありがとうございます」

 宗くんはそのままメールをはじめる。

「鎮は?」

「凹んでましたよ。恭兄さんが話を聞いてますから」

 だから大丈夫と続きそうな言葉にむっとする。

 宗くんは確実に鎮の味方。

「恭兄さんが大丈夫と言ったら大丈夫ですよ。千秋先輩は千秋先輩で鎮先輩をちゃんと信じてればいいんですよ。兄弟、でしょう?」

 信じる?

「千秋先輩は鎮先輩にとって傷つけたくない特別ですから。距離をとってるのも揺らいでいるのもそれを解決すべきは鎮先輩自身でしょう?」

 特別?

「俺だって助けたいし、力になりたい」

 スマホからひょいと上げたその表情は少し不思議そうだった。

「求められたときに応えられればいいと思いますよ? 過干渉はオススメしません。対応を、いきなり変えられると拒絶されたと感じることもあるんですから」

 えっと、難しいって。

「今なら空さんの話題をふっておけば鎮先輩すぐ落ち着くそうですけど?」

 !

「そんなのわかってるよ! ただその惚気にこっちがどれだけあてられると思ってるんだよ!」

「ものすごく?」

 俺がカッカしてる横でエルザとルーカスが堪え切れないように噴き出した。

 そっと横を向いたりして視線を外して小さく笑ってるのがなんだかとてもむかついた。



「空ねぇにメール?」

「鎮先輩、落ち込んでましたから、一番効くだろうって」

「夜に?」

「一応、僕はお迎え要員ですね」

 小さく、空さんの都合がつく限りはと付け加えられた。

「どんな話してんの?」

「聞いてません」

 え?

「恭兄さんが鎮先輩にとっていいだろうと思う行動を取ってると言ったなら、僕はそれを信じるだけですから」


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より空ちゃんお名前お借りいたしました。

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