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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
609/823

九月の海。空ちゃんとの対話③

「泣かないで」

 そう言ったのはどっちだろう?

 空の瞳からこぼれ落ちる雫はキラキラとキレイだ。

 ただ俺が言葉を紡ぐ間、空は黙って聞いてくれてた。

 そばに触れていてくれたから、囁くような、聞き逃しそうな潮騒に紛れるような俺の声だったと思う。

 ぽすんと感じる胸元にある空の重み。

 大丈夫と囁かれてるようであたたかくて愛おしい。

 体を起こそうか、このまま目を瞑るかで悩む。

「すっげーさ、面倒だと思う。空からいろいろ取り上げちゃうんじゃないかって思う。空なら得れたモノが遠くなるんじゃないかと思うんだ。俺はきっとそれを強いてしまう」

 それでもワガママでもいいかなぁって思うんだ。

 そばにいたい。抱き締めてキスして笑顔でいて欲しい。同じくらい困らせたい。


「空が、好きだよ。それとさ、空には嫌われたくないんだ。他の誰に嫌われて別にいいけど、空には、嫌われたくないんだ」

 あたたかなぬくもり。夜空に星は見えない。

「……嫌いにならないよ」

 潮騒に紛れて聞こえる空の声。

「誰も、鎮君のコトを嫌ってないよ」

 困ったような怒ってるような拗ねた声が愛おしい。嬉しくてより味わうように瞼を閉ざす。

「空、空は、俺のだよね?」

 呟いて、目を開ければ空の瞳と視線が絡む。

 頷かれてホッとする。

 羞恥を含んでぽつぽつと途切れ気味に告げられる言葉に安心して、同時に困惑する。

 行為自体もアレだけど、それだけじゃなくて!

 空は、空はさ、

「空はすっごくおかあさんになるの似合いそうだから。……きっと、俺とじゃその機会は遠いと思うんだ」

 言ってて顔が赤くなってると思う。

「そーいう未来風景()は思い浮かぶのに、きっと遠い。もしかしたら、そーいう未来を奪うのかもしれないって思うんだ。ずっと、ずっと一緒にいたいって思ってるってコトはさ。それに俺は自分が子供を愛せるか自信ないし」

 できないと感じるのは弱いから。

 つっかえそうになりながら告げる。

 いつの間にか抱きとめられた頭。近さに心音が柔らかく聞こえる。必死に心を込めて告げられる空の言葉が降ってくる。

 心音と重なる空の声は安堵を誘う。

 こんなに困らせてる。

 傷つけたくない。泣かせたくない。

 でも、

 そんな空も見たい。

 そう思うと自嘲の笑いがこぼれる。

 俺は卑怯でズルいんだ。


「そら」

 呼びかけてその潤んだ瞳を見つめる。

 涙の跡をキスで辿ろう。

 逃がさない。

 逃げたりしないのはわかってる。

 それでも、不安なんだ。

 居なくならないで。

 そばに居て。

 涙と汗。空の味。





「愛してる。きっと、誰よりも」



 空を。



『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より青空空ちゃんお借りしております

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