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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014秋
608/823

九月の海。空ちゃんとの対話②

鎮の回想&語り回

空ちゃんは膝の上♪

 俺の世界ってさ、イメージとしては暗い赤と白で出来てたんだと思うんだ。


 嘘でもいいからこの赤い紅い朱い世界で必要とされたかったんだ。

 本当は、本当が欲しいのかもしれないけど、俺にはわからないんだ。

 すっごくまとめれないんだ。

 それでも、空にちゃんと伝えたいんだ。自分でさ。



「大好き」

 いつものように手を伸ばした先にいるのは鏡に映ったような(ちあき)

「うるさい、きえちゃえ。おまえなんかきらいだ」

 突きつけられる言葉に反応が追いつかなくて、いらないと言われて「ああそうか。そうなんだ」とどこかすとんと納得した。


 わかってた。

 僕は求められていないって。

 愛してほしいなんて、好きになってほしいなんて我侭は言わない。

 嫌ってもいい。

 それでもせめて僕を見て。

 君は眩しい。

 いつも見てなんて言わない。

 時々でいいんだ。

 僕を思い出して。


 俺はさぁ。いれば使えるけど、居なくても困らないんだって知ってた。


 赤い紅い朱い世界。

 ある日、そこから追い出された。

 どうしていいかわからなかった。

 こわかった。

 なんにもなかった。


「何がしたい?」


 尋ねてくるその言葉がこわかった。

 かろうじて返せたのが「わからない」

 その言葉が受け入れられて。

「しかたないね。ゆっくりね」と撫でられる。

 こわかったこわいんだ。

 応えることができなかった。

 機会は与えられてる。まだ、いらないって言われない。

 でも応えることができなかったんだ。


「どうしたい?」


 そう聞かれても僕にはわからなかった。

 好きだよと伝えて手を伸ばす。

 希望に沿って、上手にできたら褒めてもらえる。

 だから、好きになる。愛する。手を伸ばす。

 そうしたらいらないって言われない。期待に応えられれば褒めてもらえる。また会いに来てくれる。

 それでも、僕がいた世界とこの世界は色がぜんぜん違って、わかるようにならないまま外側だけ取り繕って、ずぅっとわからないまま僕から俺になる。


「近づかないで」


 そう言って泣くのはおかあさん。

 怪我をさせないように様子を見ながら距離をとる。

 言葉をくれるからほっとするんだ。

 おかあさんは強くて弱い。

 愛されるのを望んで、同時にこわがってる。


 泣いて縋ってまた恋をして。そんなことができるぐらいに強ければよかったんだろうけど、おかあさんはそこまで強かにはできていなくて。

 それでも負けを認めたがらない強情さ。

 おかあさんが落ち着くんなら別にいいんだけど。



 だから、誰かの一番になれるなんて考えてなかった。


 俺はきっとおかしいし、性質が遺伝するというのなら、危険性は高いと思う。

 人を傷つけることを厭わなかった父親に、実の親に捨てられたあてつけに子供を手放せない母親。育てられはしなかったのにね。


 うーん。

 普通っていう距離感が結局理解出来てないんだと思うんだけどさ。


 手を差し伸べられてるのはわかってもこわくてその受け取り方がわからない。


 好きだよ。愛してる。


 こう言った時も返してもらえるのは期待してないんだ。ひでーよな。

 でも、返してもらえば嬉しい。


 独占したい束縛したい気持ちが強まれば、傷つけるんじゃないかとこわくなる。


 いろんな姿を見たい。


 それは、壊れていく姿も当てはまりそうで、俺はこわいんだ。


 傷つけたいなんて望まないのはずなのに、望むんだ。



 誤解だったのに。

 すれ違うなんてよくあることで。


 そう思えればいいのにそう思えない出来事は多くて。


 だからひとつひとつそれを潰してくれる言葉はすがりつきたくなるほどに愛おしい。


 何も、出来なくなるんじゃなくて、最初から何もできないんだ。


 好きだよ。


 きっと俺にちゃんと気持ちが動いてて、それが正しいと保障なんかできないけど。


 絶対さ、たくさん、困らせると思うんだ。


 たとえば俺は、キスやハグは好き。でも、そこから先の行為はたぶん出来ない。特別なら平気かもしれない。でもこわいんだ。


 中三の時にさ、興味本位にそういう機会があったんだ。

 ん、ミホちゃんね。有坂がなんか言ったらしくて。

 でも、結局なにもなかったんだよ?

 会ったこともない。見たこともない父親の記事がさ、脳裏を埋めて気持ち悪さで眩暈がした。

 女の子の柔らかさ暖かさより、脳裏を埋めた記憶で気持ち悪くて。

 他のおねーさんとかでもおんなじでさ。


 ん~?

 トラウマから来る拒絶反応?


 ずっと一緒にいたいって言うことは先のことも考えなきゃダメと言われて、伏せておくのはフェアじゃないと言われてさ。


 ああ、そうかって思ったんだ。


 俺じゃ、欲しいものを我慢させるんじゃないかって思ったんだ。

 きっとさ、こういうことを聞かせるのも困らせてるんじゃないかと思う。


 でも、他にどう言えばいいかわからないんだ。



 やっぱ、俺ばっかり無理させてるよなぁ。



 なぁ、やっぱりさぁ、言葉にして伝えるって難しいよ。


 できるだけさ、がんばってまとめたんだ。

 多分こうって思えたことを順番を決めて繋げてみただけで、ちゃんと必要な言葉が入ってるかもわからないんだ。


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

より青空空ちゃんお借りしております

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