うろ中。二学期だ。BY長船
椎野翔真。
二学期からうろな中学に編入してきた。ついでに同じクラスだ。
山辺の前の学校でのクラスメートらしく、妙にギクシャクしてる。
おれ、長船祥晴はその光景を眺めている。
かつて付き合ってたのだろうか? 小中高とついでに大学が付いてる学校だったと聞いている。(山辺の双子の兄から)
まわりも、きっと淡いプチロマンスを期待している。
そして、園芸部の敷地を話し合いに提供中。
菊の蕾がいい感じに膨らんでるし、コスモスや桔梗も伸びてるし、ムードがないとは言うまい。
苔ゾーンには近づくなよ……。
「……」
「…………」
二人は沈黙のままだ。
正直、時間が勿体無い。それでもじりじりと見守る。実にしかたなさそうに山辺が口を開いた。
「それで? 椎野君の謝罪は手紙も受け取ったし、公志郎兄さんからも聞きましたし、本人じゃなく、弟さんのことですから、椎野君が気にする必要はないと思うとお返事したはずです。……それに……、恭一郎兄様に仕掛けられたと聞きました。兄が申し訳ありませんでした」
「ううん。いや、あのっ、恭一郎先輩が怒るのは普通だと思うんだ。それに、具体的に何かされたわけじゃないし、それまで、知らなかったから、勝手にこっちから公志郎とも距離を取っちゃって」
違う意味での修羅場展開中?
こーしろーにいさん?
普段、『公』呼びじゃん。
それにしても、会話がかってーの。
「それに!」
「それに?」
「知ったら、ちゃんと謝罪とお礼をしたいんだ」
「おれい?」
「そう。……助けてもらったからここまで成長出来たって、僕も誰かを助けられる人になりたいんだって、天音さんたちのお母様に伝えたいんだ」
キラキラと夢見るオーラがココからも見えた気がした。
「死んでるし、お墓、うろなじゃないし、位牌もうろなにはないわ」
ぉおう。身も蓋もない対応だ。山辺さん!
「それに、うちの弟が君の妹さんを登校拒否に追い込んじゃったしね。……そのコトもちゃんと謝罪したいんだ」
ロマンスじゃなかった!!
残念!
一歩後退すると柔らかな壁。
「美丘さん?」
ばっと口をふさがれた。高遠もそっと覗いてた。
お前らも好奇心豊かだな。
「そっとしておくのがいいと思うわ。小学校も違うし、芹香ちゃんが間に立ってるし、私も変に気にされると困るから」
「でも!」
あ、会話が進んでる。
山辺さんが容赦ないなー。
「あのね、あんまり覚えてないの。父は母が大好きでいなくなってから帰って来ることは減ってしまったけど、兄様や叔父様達の方が私たちには近しくて、両親は少し遠いの。だから、母が貴方を助けたことは母がしたかったことなの。それは私たち兄弟には関係ないし、椎野君が命を粗末に扱わなければそれでいいことだと思うの」
関係ないって、きっついなー。
椎野氏うろたえてるしー。
「髪を切って、随分雰囲気が変わったって思ってたけど、やっぱり、優しいんだね」
椎野氏!
どこをどう捻ればそう映るんだ!
みどりちゃん。放せ、放すんだ!
あれは突っ込まなきゃ駄目だろう!?
予想外すぎたよ!
美丘さんにハンカチで口元を抑えられた。まだ、黙ってろと?
つか、いつの間につるんでんだよお前ら!
「優しいんじゃなくて、椎野君に関心がないだけだから。前の学校の誰にも関心を持ってなかったから。そこはちゃんと抑えておいてくれると嬉しいかな」
静かに告げる山辺。椎野氏、流石に死んだな。




