料理部 調理室で
料理部の拠点調理室。
先客は千秋先輩。
「千秋先輩、なに作ってるんですか?」
「芋の裏ごし」
やる? とばかりに差し出された。
おとなしく受け取って続ける。出来る作業は少ないから出来るコトはやるようにしてる。
「あと二回繰り返すんだよ」
ふらふら手を振りながら告げられた言葉にギョッとする。
そこそこの量はあるし、結構力作業だった。
裏ごしされた芋は三色。
白、赤紫、黄色だ。
ラップを使って一口サイズの巾着絞り。携帯にも便利なラップまま。
「コロッケのタネにしてもいーんだけど、このままが軽く食べれるだろ?」
確かにお手軽、……って手元にある調味料はなんですか。千秋先輩。
マヨネーズに刻みチョコ、視線に気がついたのかにっこり笑われる。
「マヨネーズは普通のと、カロリーハーフ。こっちはマスタード入りね」
うん。わかる。わかります。
「で、粉わさび、山椒、鷹の爪、ミルクチョコ、ビターチョコ、甘辛目に炒めた鶏そぼろ、栗の甘露煮の砕いた奴、あと、チーズかな」
おにぎりの具を入れるように包んで絞る。
なにそのスリリング。
中身がわからない。
「大丈夫だよ。ここには中身明記したやつ置いていくから。旧部長はほら、ロシアンルーレット好きだからね。楽しんでくれると思うよ?」
不安を払うように笑われて、あ、麻衣子ちゃんだもんなって納得できたっ。
「砂糖は使ってないから、ちょっと物足りない感じかもね。あとは、クレープ生地で包んじゃってもいいかも?」
「え?」
「結構、これなら簡単だし、事前準備きくからさ。揚げてコロッケでもいいしね」
タッパーにポイポイ放りこみながら笑う。
「ソレどーすんですか?」
ふっと笑顔が消える。
え、聞いちゃダメだったの?
「バイト先で餌付けができるか挑戦中」
ん?
今、角砂糖包んでませんでしたか?
「じゃ、頑張ってね」
ぱちんとタッパーを閉じてからひらり手を振って調理室から出る千秋先輩。
さっさと帰ってしまうけど、三年だし、顔出してくれてるだけ助かるし、餌付け成功を祈ろうと思いつつ、裏ごししながら置かれたレシピの紙を覗く。
材料の分量が書いてあって、あとは茹でるか蒸すかしてから裏ごしして包むとだけ書いてあった。
わかんなきゃメールしろってコトか?




